写真上達の本質を考えてみる

写真講師を続けてきたカメラマンの思考を記事にしていきます

《マイクロフォーサーズは高感度が苦手》は間違い。本当の弱点は低感度のシャドウノイズ


 

  • マイクロフォーサーズは高感度に弱い

 

という言葉は、マイクロフォーサーズが生まれた時から言われていた言葉です。正確には、フォーサーズ時代から言われていたでしょうか。僕がマイクロフォーサーズユーザーになったのは約2年前ですが、それまでは僕も同じ認識をしていました。自分でマイクロフォーサーズのカメラを使うことがなかったので、当然と言えば当然だったと思います。

 

ですが、約2年前に自分がE-M1ユーザーになり、当時持っていたキヤノンのフルサイズ一眼と比較してみると、不思議と画質に差がなかったんです。むしろE-M1の方が良好なケースが多々ありました。その上、一眼レフより使い勝手の良いミラーレス一眼ということで、僕がミラーレス一眼のみの機材にするまで時間はかかりませんでした。

 

そして2年間仕事でもプライベートでもE-M1を使い込んできましたが、そのおかげかマイクロフォーサーズのメリットデメリットがよりはっきり分かるようになりました。その中でも一番の発見は、マイクロフォーサーズは高感度に弱いのではなく、低感度こそが一番のウィークポイントだということです。なぜそうなるのか?順番に解説していきます。

 

高感度撮影時は被写界深度分だけISO感度を落とすことができる

マイクロフォーサーズとフルサイズなどを比較して、同じISO感度ではフルサイズの方が良いと言われます。それは間違いないです。ですが、実際の撮影では同じ感度で撮ることはあまりありません。なぜなら、マイクロフォーサーズとフルサイズの被写界深度差は約2段なので、同じ被写界深度を得ようとした場合マイクロフォーサーズの方が絞りを2段分開けることができます。絞りを2段開けられるということはISO感度も2段落とすことができます。

 

では、フルサイズでISO800で撮るのとマイクロフォーサーズでISO200で撮るのはどちらが良好になるか?という話になりますが、それを先日の記事で考察してみました。結論からお伝えすると画質が良いと言われるソニーのα7RⅡとE-M1がほぼ互角になります。安価なα7ⅡとE-M1の比較だとE-M1の方が良好に。E-M1 MarkⅡと比較すればα7RⅡよりも少し良好になる時があるぐらいです。

 

ただ、これには2つ条件があります。それは、

 

  • 自分が求める被写界深度を得られるレンズが存在する。
  • 被写体は静物か人物で、被写体の動きを止める動体撮影ではない。

 

ということです。フルサイズでF2のボケ量は、マイクロフォーサーズのF0.95のレンズを使うことで得ることができます。ただ、フルサイズのF1.4のボケ量はほぼ不可能で、マイクロフォーサーズで選択できるレンズが存在しません。ですが、もし自分が求める被写界深度が得られるレンズがあるなら、マイクロフォーサーズはフルサイズと互角に近い高感度撮影を行うことができます。

 

また、被写体の動きを止めるなら必然的にISO感度は上がっていくので、そうなるとフルサイズと同じようなISO感度設定になり被写界深度差も優位に働きません。フルサイズで暗いレンズを使うなら、マイクロフォーサーズ用の40-150mm F2.8等のレンズで被写界深度差分の感度を落とすことで同等以上になりますが、F4-5.6等の暗いレンズを使うならフルサイズとのISO感度設定に差が無くなります。ケースバイケースではありますが、フルサイズで300mm F2.8、400mm F2.8等のレンズを使えることも考えれば、画質面では劣るケース多くなってきます。ただ、望遠レンズはフルサイズに比べて小型軽量になるというメリットはありますので、何を優先させるか次第になりますね。

 

僕の場合は動体撮影で被写体の動きを止めるような撮影はしません。また、35mm判換算で50mmと85mmの単焦点レンズでF2のボケ量が実現できればいいので、ノクトン 25mm F0.9542.5mm F0.95のレンズを使うことで対応できています。

 

高倍率ズームでもF8のボケ量で隅まで高画質というのを実現できればいいので、12-100mm F4 PROを愛用しています。フルサイズで24-200mmをF8に絞るよりも、絞り開放から隅までよく解像する12-100mm F4 PROを使う方が画質的にも良好になります。

 

ISO200でダイナミックレンジ拡張を可能にした反面シャドウノイズは少し増える

さて、本題はここからになります。マイクロフォーサーズは、自分が求める被写界深度が得られるレンズがあるなら、高感度撮影ではフルサイズと互角になるとお伝えしました。実際に、僕は高感度撮影で困ることはありません。F0.95のレンズを使ったり、手ぶれ補正に助けられてISO感度を上げるシチュエーションが少ないからです。

 

それより問題なのは低感度です。マイクロフォーサーズはベース感度がISO200です。これはダイナミックレンジを拡張する為で、とくにオリンパスのカメラでISO200とISO LOW(ISO 100)を撮り比べてみるとISO LOWの方が明るい部分がより白く飛んでしまうのが分かります。なので、通常はISO200で撮影するのが理想です。

 

ただ、とくにハイライト側のダイナミックレンジが広くなったことの代償として、シャドウノイズが多く発生するようになります。こちらをご覧下さい。

 

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出典:Digital Photography Review

 

こちらは、現像処理を想定した低感度で撮影した画像を2EV明るく補正するという実験をRAWデータで行ったものです。ご覧の通り、イメージセンサーが大きくなるにつれて画質は良好になっています。僕は普段E-M1を使っていますが、ほぼ同じ感覚です。

 

マイクロフォーサーズの本当のウィークポイントはこれです。高感度はフルサイズと互角になるので気になったことがありませんが、それよりも低感度のダイナミックレンジの方が気になることが多いです。ただ、気になるというのは言葉通りの意味で、実用的にならないから悩むということではありません。

 

僕の場合、普通の撮影では2EVも暗いところを補正することはほとんどありませんし、明るく補正しても1.5EVぐらいです。上のテストでは100%表示にしているので違いがよく分かりますが、丁寧に現像すれば鑑賞距離から1.5EVぐらい補正したシャドウノイズの多さは気になりません。 

 

それでも不安なら、マイクロフォーサーズでもパナソニックのカメラを使うことです。上の画像をご覧頂くように、同じマイクロフォーサーズ規格であるオリンパスとパナソニックでも、メーカーの方向性の違いなのかパナソニックの方がノイズが少ないです。Dxomarkのスコア上ではパナソニックよりオリンパスの方が良好ですが、低感度のポテンシャルはパナソニックの方が良さそうですね。もちろん、潔くフルサイズやAPS-Cにするのもいいでしょう。

 

マイクロフォーサーズの本当のメリットはトータルバランスの良さ

ここまで触れた通り、2つの条件さえクリアすれば高感度はフルサイズと互角になり、低感度のシャドウノイズが多いものの通常の撮影では実用的です。そして、そこに強力な手ぶれ補正を活かせるなら、シチュエーションによってはフルサイズよりも高画質になるケースもあります。

 

手ぶれ補正が活かせるシーンというのは主に静物なので、被写体の動きを止める動体撮影とは対照的な撮影シーンです。なので、静物が多いならマイクロフォーサーズのメリットは大きいでしょう。ちなみに、個人的に思うマイクロフォーサーズのメリットはトータルバランスの良さです。下記の画像をご覧下さい。

 

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これは、完全に僕個人の主観でマイクロフォーサーズとソニーのα7シリーズの比較をグラフにしてみたものですが、低感度の画質と低感度のレタッチ耐性以外はマイクロフォーサーズの方がバランスが良いという印象です。もちろん、両社がターゲットにしている市場やコンセプトが違うので特徴が違っていて当たり前であり、優劣を言っているわけではありません。

 

マイクロフォーサーズを選ぶ基準は?

  • マイクロフォーサーズは高感度に弱い
  • マイクロフォーサーズは背景がボケない

 

そんな言葉は何度も耳にしてきましたが、これはスペック・仕様しか見えておらず、実際の撮影で設定値を深く考え込まない人が言う言葉です。実際の撮影では被写界深度を考えて絞り値を選択しますし、そうなると背景のボケ量も変わらず、ISO感度も低くなり高感度撮影で不利になりません。

 

その為、マイクロフォーサーズを選ぶ基準は

 

  • 自分が求める被写界深度のレンズがあるか?
  • 低感度のシャドウノイズが許容範囲であるか?
  • 被写体の動きを止める撮影があるかどうか?

  

この3点になります。

 

 

こちらの記事では4つの質問となっていますが、こちらでは自分が求めるレンズを2種類に分けているからで、基本的には同じことを書いています。

 

実際にマイクロフォーサーズを使っている人はかなり多いはずですが、マイクロフォーサーズの弱点は高感度であるという認識がまだまだ一般的です。ですが、画質面で本当に気にしなければいけないのは高感度ではなく低感度であり、低感度の画質が自分の許容範囲になるかどうかがポイントとなってきます。それさえクリアし自分が求めるレンズがあるなら、マイクロフォーサーズはきっとあなたにとって魅力的なカメラになると思いますよ。

 

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