当たり前ですが、取材先のお店によって撮影環境は大きく違います。その環境次第で撮影の方法が変わってくるんですが、まず一番最初に確認するのは自然光の入り方です。自然光が入ってきていれば、その自然光を活かして撮れる。しかし、自然光がほとんど入ってこない環境なら、自分で光を作らないといけません。その時に必須になってくるのがストロボと光を柔らかくする道具です。
必須道具①:ストロボとアンブレラ(+銀レフ)
自然光があれば、上のように自然光+銀レフを使うことで撮影することができます(左奥からの自然光+向かって左側に置いた銀レフに反射した光)。ただ、このような写真が撮れる条件は窓際ということ。窓がない場合や窓の近くで撮影できない場合は、自分で光を作らないといけません。
その時に使うのがストロボとアンブレラです。
上の写真の左側に見えるのが、スタンドにとりつけたFL-600Rというオリンパスのカメラに取り付けるタイプのストロボです。そしてスタンド先端に刺さっているのが、アンブレラです。
ここでは僕が普段よく使うアンブレラを取り上げていますが、必ずアンブレラでないといけないわけではありません。他にも、
- ソフトボックス
- トレーシングペーパー
などの選択肢がありますが、どれも光を柔らかくするという意味では同じです(光を柔らかくする=拡散させる理由は、ストロボの光を直接当ててしまうと鋭く濃い影が出てしまうからです)。あとは、
- 人物の目に丸いキャッチライトを入れたいからアンブレラ。
- 光がまわりやすいアンブレラよりも、光を被写体に集中させたいからソフトボックス。
- 被写体の反射を綺麗なグラデーションにしたいからトレーシングペーパー。
などといった用途によって使い分けます。個人的には、カメラにとりつけるタイプのストロボは照射角が調整できるので、アンブレラと組み合わせて使うことで光の拡散性を調整しやすい為、アンブレラをよく使っています。
さて、話を戻しますが、もう一度こちらの写真を見てください。
ここではアンブレラが二つと大きめの銀レフ(画面右側)がありますが、物や料理なら大抵の写真を撮ることができます。実際にこのセットで撮影したのがこちら。
↑左奥に1灯、左真横に1灯、右側に銀レフで撮影
↑左奥に1灯、左真横に1灯、右側に銀レフで撮影
※左奥に1灯、左真横に1灯、右側に銀レフで撮影
※左奥に1灯、左真横に1灯、右側に銀レフで撮影
被写体の形が複雑でなければ、アンブレラ1灯で十分なこともあります。
※右奥から1灯、左奥にA3サイズを真ん中で折り曲げた銀レフで撮影
※左奥から1灯だけで撮影
ご覧のように、アンブレラが2灯と大きめの銀レフがあれば大抵の写真が撮れてしまいます。実際には予備も含めアンブレラ4本とスタンド3本、銀レフも大中と持ち歩きますが、使うのは大抵アンブレラ2灯と銀レフです。
ただ、アンブレラで対応が難しい撮影もあります。よくあるのが、光を反射してしまうような被写体です。
今回詳細は割愛しますが、とくに被写体の表面に反射のグラデーションをかけたい時や、アンブレラやソフトボックスなどの形がそのまま写り込んでしまう時は、トレーシングペーパーやアクリル板越しに光を当てて反射をを調整していきます。
必須道具②:三脚無しで撮る為にも必須な手ぶれ補正機能搭載のカメラ・レンズ
取材先には窓が無い、又は窓の近くで撮れないこともあるので、ストロボライティングは必須だとお伝えしましたが、もう一つ必須だと感じてるのは手ぶれ補正です。手ぶれ補正があれば、三脚無しでテンポ良く撮影することができるので、撮影時間を短縮することができます。
取材先では時間が限られるケースはよくあり、そうでなくても長々と撮影するのは迷惑になってしまうので撮影効率を上げる意識は重要です。それに、撮影時間を短縮できるということは、同じ時間でもより多く撮影できることになります。
では、写真を見ながら具体的に解説します。
↑こちらは、商店街に位置するお店で天候は曇り。窓からの光はごく僅かでほぼ電球で照らされた空間の写真です。このような空間だとシャッター速度はかなり遅くなります。
※被写界深度を35mm判換算するとF9と同等
取材先ではこのような環境で撮ることもよくありますが、1/4というシャッター速度は手持ちではほぼ不可能なので三脚が必要です。ですが、手ぶれ補正が強力なカメラ・レンズなら1/4程度でも普通に撮れてしまいます。
そして、自然光がほぼ入らない空間でこの設定で撮れるということは、大抵の取材撮影では三脚が不要になるということです。もちろん、もっと薄暗い環境で画質を落としたくないケースもあるかもしれないので、一応車に三脚を乗せておいた方がいいと思います。
ただ、僕はここ数年取材撮影で三脚を使ったことがありません。一度、もっと薄暗いサウナの室内を撮影した時に、
- 1/4
- F2.8(被写界深度を35mm判換算するとF5.6)
- ISO800
という設定で撮影したことがありますが、F5.6の被写界深度があれば観賞距離では問題なかったりします。写真を大きく使うという用途でパンフォーカスにしたいなら三脚は必要になると思いますが、個人的にはここ数年で三脚なしで撮れています。
撮影の準備・片付けの短縮の為にもクリップオンストロボ
さて、個人的に取材撮影で必須になる道具を2つご紹介しましたが、ここからは少し補足です。
アンブレラをご紹介した時の写真に、ストロボがあったと思います。これは、カメラに取り付けるタイプのストロボでしたが、普段から僕はこのストロボで撮影しています。
このストロボを使う理由は、機材の超軽量化と準備・片付けの時間短縮です。大型ストロボは軽くても800gほど。オリンパスのクリップオンストロボなら約300gなので、5つ持ち歩こうと思ったら2500gの差になります。もちろんバッグも1つでは収まらず車と取材先を2回か3回往復しないといけません。ですが、クリップオンストロボにすればカメラバッグの端1列に5つ入り、車と取材先を往復すること無く1度で移動できます。
また、電源コードが必要ないので、コンセントの位置を気にせず好きな場所で撮影することができます。これは意外とストレスフリーになり、コードリールなどが必要無いので時間短縮にも一役買います。
光量は、物や料理を撮るには十分です。人物も、複数のストロボを組み合わせれば十人前後を撮るぐらいは問題ありません(モデル撮影のように数秒に1度のペースで何百枚も撮る場合は向いていません)。
撮影効率を考えてみるとクリップオンストロボの利便性は明らかで、小回りがきくので撮影時も楽です。
最後に
手ぶれ補正なんて無くていい。ストロボの光はダメだ。なんて言葉を時々耳にしますが、手ぶれ補正はあくまで1つの機能に過ぎないので、必要な人と不必要な人がいて当然です。ですが、毎月取材撮影が何件も発生する僕にとっては、手ぶれ補正は必須です。
あとストロボの光がダメで自然光が良いという言葉は、
光について分かっていない
というのを公言しているようなものです。自然光でもストロボ光っぽく撮れる環境はありますし、ストロボ光でも自然光の柔らかい光を再現することはできます。どちらが良い悪いではなく、環境によって何を活かすのか?それ次第です。その結果、自然光で撮れればそれで良し。ストロボを使って光を作る必要があるなら作る。
優劣ではなく、自分が撮りたい写真を撮る為に環境に合わせてチョイスするスキルが必要ということですね。
ちなみに、ストロボを勉強すると自然光もより細かく分析できるようになりますので、自然光派の人もストロボを使ったライティングを勉強してみるといいですよ。