昨日、キヤノンのフルサイズミラーレス一眼 EOS Rが発表されました。
キヤノンが「EOS Rシステム」を正式発表 - デジカメinfo
個人的にはEFマウントのミラーレス一眼が出てくるのではないかと思っていましたが、キヤノンも新マウントで登場しましたね。そして、今回のRFマウントのミラーレス一眼で良い意味でいろいろ驚かされました。ということで、スペックや詳しい内容は北村氏の記事を参考にしながら、今回はキヤノンの発表で僕が感じたことを書いてみたいと思います。
便利な機能を設けたアダプター
キヤノンが新マウントを採用するということは、既存のEFレンズはアダプターを使うことで利用しなければいけません。ここで、普通のアダプターしか用意しなかった場合、今後はRFレンズがメインになり既存のEFレンズは旧式になるのかなという印象を僅かながらにも与えることになってしまいます。
ですが、キヤノンはアダプターをさらに3種類用意していました(普通のアダプター1つと、機能を持たせたアダプター3つの合計4つ)。
コントロールリングマウントアダプター EF-EOS R
出典:キヤノン:コントロールリングマウントアダプター EF-EOS R|概要
3つのアダプターのうち1つは、コントロールリングを設けているもの。このコントロールリングには撮影中によく使う機能を割り当てることができます。具体的にどの項目が割り当てられるのかが探しても見つからなかったのですが、カスタマイズできる一般的な機能は可能なはずです。
出典:キヤノン:EOS Rシステムブランドサイト|EOS R 特長紹介
このコントロールリングは新しいRFレンズにもついているものですが(ニコンのレンズはフォーカスリングをコントロールリングとして使えますが、キヤノンはフォーカスリング・ズームリングとは別にコントロールリングが独立しています)、アダプターを使って既存のEFレンズを使う時にも同じ利便性を得ることができます。このコントロールリングがあることで操作性はさらに良くなり、EFレンズユーザーにとっても付加価値となります。
マウントアダプター EF-EOS R ドロップイン 可変式NDフィルター A付
出典:キヤノン:ドロップインフィルター マウントアダプター EF-EOS R ドロップイン 可変式NDフィルター A付|概要
2つ目のアダプターは可変式NDフィルターが使えるもの。通常のレンズは、レンズ先端にフィルターをつけることでフィルターの効果を得ることができますが、フィッシュアイや超広角レンズでは先端が出目金のようになっていてフィルターがつけられないケースがあります。 もし出目金レンズでフィルターの効果を得たい場合は、レンズ先端に取り付ける大きなフィルターが必要になります。
ですが、このアダプターを使うことで出目金の超広角レンズを使っても手軽にフィルターの効果を得ることができるようになります。少しニッチな市場かもしれませんが、風景撮影をする人にとってはとくに貴重な存在になり、これだけでも既存のEFレンズの存在価値が生まれます。超広角以外でも、いちいちフィルター径に合わせて何枚も買う必要が無くなる為、フィルターを多様する人にとっては魅力的なシステムになりました。
ドロップインフィルター マウントアダプター EF-EOS R ドロップイン 円偏光フィルター A付
出典:キヤノン:ドロップインフィルター マウントアダプター EF-EOS R ドロップイン 円偏光フィルター A付|概要
3つ目のアダプターは円偏光フィルターがつ使えるものです。先ほどのNDフィルターとは違い、水面やガラスなどの光の反射を抑える効果がある為、これも風景撮影などではよく使われます。NDフィルターと同様、このアダプターがあるだけで出目金レンズで気軽に偏光フィルターを使うことができるようになります。
コントロールリングとマルチファンクションバーによる新たな操作性
出典:キヤノン:EOS Rシステムブランドサイト|EOS R 特長紹介
通常ならAFポイントを移動できるスティックが採用される、グリップを握った時の親指辺りに見慣れないマルチファンクションバーが設けられています。このファンクションバーもカスタマイズできるようで、左右にスライドさせて設定を変えたり、左右のボタンをおすことで割り当てた機能を呼び出すことができ、ワンハンドで
- ISO
- ホワイトバランス
- ピント確認
- 動画撮影
- フレキシブルAE
- AF
- 画像送り
などを調整することができるようです(スペシャルサイトでは「など」という表現がなかった為、これらの機能に限定されるかもしれません)。
コントロールリングに加え、ファンクションバーによって通常の撮影ではかなり快適な操作ができるのではないかと思います。個人的には、今あるカメラの中でも一番使いやすい仕様になっているんじゃないかと思ってしまいますね。
ちなみに、AFエリアの移動はファインダーを覗きながらモニター上で指をスライドさせることで変えられます。絶対位置と相対位置の設定があり、タッチ領域は9種類あるので、AFエリアの選択も使い勝手は良さそうです。
絶妙な値段とレンズのラインナップ
ニコンの時にも騒がれたシングルスロット。キヤノンのEOS Rもシングルスロットですが、今回のEOS Rは値段がキヤノンオンラインショップで約23万。すぐに実売20万をすぐに切ってきそうな値段です。
一方、ニコンZ7は実売約39万。Z6で約24万です。Z6の値段ならまだ分かるものの、Z7の値段でシングルスロットはやはり疑問を感じます。ですが、実売20万をすぐに切ってくるならユーザーも納得です。
カメラとして主要な機能であるAFや操作性の使い勝手は手を抜かず、他で適度にコストダウンし手頃な値段にしてまずは多くの人が気軽に導入・実際に体感してもらうことを優先したのではないかと思います。
ユーザー心理として、新しいシステムのカメラにいきなり大金をつぎ込むよりも、まずはミドルクラスで手頃なカメラで試したいという方も多いはずです。そういう意味でも、なるべく値段を下げたキヤノンはやはり上手いなと感じますね。
また、レンズのラインナップに関しては、今回は良い意味で驚いた人が多いと思います。24-105mmという定番のレンズを押さえ、28-70mm F2という今までに存在しなかったズームレンズと50mm F1.2という標準レンズの王様を発表し、35mm F1.8 マクロ ISという手軽に準広角ハーフマクロが楽しめる定価75,000円のレンズを発表しました。現実的なレンズと、あっと驚くレンズを同時に発表する辺りがキヤノンらしいです。
また、アダプターにコントロールリングやフィルターを組み込むことで、既存のEFレンズユーザーも新しい価値として気持ちよく使うことができます。ニコンは、どうしても新しいミラーレス一眼のレンズが揃うまでの繋ぎというイメージでしたが、キヤノンの発表ではそれらが一切ありませんでした。
ニコンも含め、他のメーカーでも「止めない」と言っていたシステムが終わりを告げることは多々あるので、ニコンのFマウントもいずれそうなるのかなというイメージがありましたが、キヤノンは既存のEFレンズもRFレンズも両輪でいくというのが伝わってきます。
もちろん、将来的にキヤノンも新RFマウントのレンズが主流になる時代がやってくるかもしれませんが、現時点ではニコンよりもキヤノンの方が一眼レフとミラーレス一眼の両輪という良いイメージがしっかりとあります。それぞれの可能性を最大限引き出すというキヤノンのメッセージがマウントアダプターに現れていると感じました。
6D系・5D系ユーザー共に魅力的なカメラに
カメラとしての機能はすでに十分だと思うので、6D系ユーザーの方も5D系ユーザーの方も予算が許せば即導入してもいいのではないかと思います。とくに、ポートレート撮影や静物中心の撮影の方は魅力的なはずです。僕が一眼レフからミラーレスに変えた理由の1つである、レンズによる前ピン後ピンに悩まされることも無くなります。
ただ、
- 電子ファインダーに馴染めない
- 瞳AFの性能に期待したい
- 撮影枚数が少ないのは嫌だ(350〜370枚程度)
- 動体撮影中心
という方はレビューが出てくるのを待ち実機に触れて試してみてからの方がいいでしょう。とくに瞳AFはS-AFに限定されるようなので、この辺りはソニーの方が優秀です。
今回、個人的にはニコンとは対照的な印象を受けましたが、やはりキヤノンのマーケティングの上手さが際立つ発表となりましたね。あとは、実際にレビューが出揃ってどのような評価になるかです。また、ハイエンドのRFマウントのカメラがどのような仕様でくるかが気になりますね。ボディ内手ぶれ補正を搭載しダブルスロット。連写もAF・AE追従で10コマ以上になってくるんじゃないかと思いますが、どんなカメラが登場するのか今から楽しみです。