マイクロフォーサーズの手引き

E-M1ユーザーのカメラマンがマイクロフォーサーズを中心に書いていきます

即実践できるマイクロフォーサーズの3大欠点を無くす3つのノウハウ




 

マイクロフォーサーズを使い続けて約2年半が経ちましたが、今までの記事ではマイクロフォーサーズの欠点を補う設定、撮り方、仕上げ方を1つ1つご紹介してきました。そこで今回は、僕が実践しているマイクロフォーサーズの3大欠点を無くすノウハウをまとめて解説してみたいと思います。

 

①C-AFの精度を上げたいなら手ぶれ補正はオフ?カメラ任せにせず画像処理エンジンの性能を発揮できるような設定を考える


E-M1を使ってC-AFを使ってテストしていた時のことです。手ぶれ補正をオンのままでC-AFを行った場合、被写体を追ってカメラを横に振ると一瞬カクっとした動きになるのが気になったので、一度手ぶれ補正をオフにしてみたんです。すると急にC-AFの精度が良くなりました。何回テストしても同じで、手ぶれ補正をオンにすると約60%の合焦率。手ぶれ補正をオフにすると約85%の合焦率に。

 

このテストは元々、C-AFでのシャッター半押しのタイミングやC-AF追従性のコツ、苦手な被写体・得意な被写体などを探る為に行っていましたが、思わぬ副産物となりました。僕は、この結果に対して

 

  • 手ぶれ補正をオンにすると画像処理エンジンの演算能力が手ブレ補正に使われてしまい、C-AF性能が落ちる。

 

という仮説を立ててメーカーに確認してもらいましたが、メーカー所有の個体でも同じような変化が起こり、その理由も画像処理エンジンに負荷がかかるというものでした。

 

この体験から、僕はカメラの画像処理エンジンは過信せずに、自分の撮りたいものにカメラも集中できるよう設定を最適化するという意識を持つようにしています。最新のカメラになればなる程、そんなことを考えなくてもいいぐらいの性能になっていると思いますが、カメラの性能を引き出すという意識は常に持っておきたいですね。

 

②ダイナミックレンジを最大限引き出す為にハイライト側の階調をギリギリまで活かす

 

マイクロフォーサーズはシャドウノイズが多い。これは多くの方が周知の事実です。2年半E-M1を使い続けていますが、最低感度のISO200でもRAWデータで見るとノイズがでていることがあります。dpreviewで、低感度でシャドウ側を明るく補正したサンプルデータがありますが、これをAPS-Cやフルサイズなどと比較して見てみるとよく分かりますね。

 

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出典:Digital Photography Review

 

しかし、何枚も撮影しRAW現像を繰り返しているうちに、ハイライト側のダイナミックレンジが意外と粘ることに気づきました。そして、どの程度のオーバー露出なら自分が得たい階調に戻ってくるのか?という実験をした結果、適正露出からプラス1段であれば意図した階調に戻せることがわかりました。この撮り方をすることでシャドウノイズを1段分減らすことができます。1段分減らさなくても通常は実用的な性能でしたが、さらに1段分減らせると十分実用的になります。

 

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現像前と後のイメージ

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マイクロフォーサーズとフルサイズのイメージセンサーを比較した場合、階調が広くて高画質なのはフルサイズというのは異論の余地がほとんどないかと思います。もちろん、写真の画質自体はイメージセンサーだけで決まるものではありません。レンズであったり画像処理エンジンだったり、各メーカーの色の拘りが画質に現れ、フルサイズよりもAPS-C、APS-Cよりもマイクロフォーサーズの方が画質が良く見えることは多々あります。

 

しかし、マイクロフォーサーズの最大の特徴であるイメージセンサーの小ささは、メリットでもありデメリットでもあります。そのデメリットの部分をより意識することで、デメリットをカバーする撮り方に意識を向けることができ、結果的にハイライト側のダイナミックレンジをギリギリまで活かすという撮り方を意図して行えるようになりました。

 

これは、もちろんフルサイズのカメラで行えば鬼に金棒です。僕の受講生さんはフルサイズユーザーの方も多いので、受講生さんはとくに喜んで真似をされています。

 

③ディティールの損失を最小限にしてシャドウノイズ・高感度ノイズを約1段分消すフォトショップの新機能《ディティールの保持2.0》 

 

2017年10月にフォトショップから新機能が登場しましたが、その中でも一番注目したいのが《ディティールの保持2.0》です。これは、例えば2000pixelの画像を3000pixelに拡大処理した際でも、フォトショップが自動的に判断しディティールを保持してくれる機能です。アドビ曰く、人工知能利用したアップスケールだそうですが、 ようは拡大してもディティールも可能な限り維持できているということです。ディティールの保持2.0が無かった時代は、拡大処理すればただpixel数が多くなっただけであまり実用的ではありませんでした。

 

ですが、今回はかなり実用的な機能として登場しました。そして、この機能での一番のポイントは、pixel数を増やしてそのまま元に戻してやればオリジナルの画像のディティールがさらに増すということです。

 

これをするだけで、本当にディティールが一段とアップします。ローパスフィルターの有り無しぐらいの差を感じるぐらいと言えばピンとくると思いますが、ローパスフィルターレスの解像感に感動した人はさらに一段上の解像感に感動できるはずです。

 

そして、ノイズとディティールは相反するものなので、ノイズを消せばディティールが失われ、ディティールを強調させるシャープネスを強くすればノイズも一緒に増えます。つまり、《ディティールの保持2.0》で一旦高画素にしてから元に戻しディティールをアップさせることで、ノイズリダクションをかけてもオリジナルのディティールはそのままにノイズだけが消えるということです。

 

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※黄色の丸はノイズが消えた一例。オレンジ色の丸は、ディティールがほとんど変わっていないポイントです。

 

フォトショップの新機能で発表された時、すぐにマイクロフォーサーズのノイズを消すのに一役買うのではないかとピンとしてテストをしましたが、予想通りE-M1のシャドウノイズが綺麗に消えました。

 

これも、先ほど同様にフルサイズで行えば鬼に金棒です。E-M1の場合はISO800ぐらいまでの高感度ノイズにしか効果が有りませんでしたが、フルサイズなら3200ぐらいでも効果があったと受講生さんから報告がありました。

 

撮り手がカメラのカバーをすることで撮影も快適に

マイクロフォーサーズの弱点としてよく挙げられるシャドウノイズの多さも、撮り方の工夫とフォトショップの新機能でほぼ消えます。高感度性能は、条件つきであれば弱点ではありません(参照記事:《マイクロフォーサーズは高感度が苦手》は間違い。本当の弱点は低感度のシャドウノイズ)。

 

強いて言うなら、

 

  • 35mm判換算でF1.4の被写界深度が得られる単焦点レンズがないこと
  • 35mm判換算でF2.8通しのズームレンズがないこと

 

というのがウィークポイントです。レンズの選択に関して言えば、物理的に選択できるレンズがありません。ただ、求める被写界深度のレンズがあるならマイクロフォーサーズはもっと多くのユーザーに受け入れられるのではないかと思います。

 

カメラには得意不得意があるので、基本的に適材適所です。ですが、不得意な部分を撮り手自身がカバーする意識があれば、選択肢はもう少し広がるかもしれません。意外と、撮影者がカバーしてやれば解決できる問題はたくさんあるかもしれませんね。