- マイクロフォーサーズの低感度時のシャドウノイズ耐性を約1段上げる擬似ハイレゾ
- 仕上がりを比較してみると
- ノイズレスの画像ならさらなる解像感を
- 低感度のシャドウノイズには効果があるが高感度ノイズは効果が薄くなる?
- 最後に
先月、Photoshopの新バージョンがリリースされました。LightroomはLightroom classicと新しいCCに分かれたり、範囲マスクのおかげでハイライトとシャドウ、又は特定の色域だけが補正できるようになったりと、いろんな意味で盛り上がっています。
ただ、そんな中でほとんど触れられていないのが、Photoshopの新機能《ディティールを保持2.0》の活用方法。《ディティールを保持2.0》の機能自体は注目されていますのであちこちで紹介されていますが、その活用方法について触れている記事をまだ見ていないのでご紹介します。
マイクロフォーサーズの低感度時のシャドウノイズ耐性を約1段上げる擬似ハイレゾ
ディティールを保持2.0は、Adobe曰く人工知能を利用したアップスケールだそうです。今までだったら、例えば2000pixelの画像を3000pixelに拡大処理を行うとただピクセル数が増えただけのような印象でしたが、新機能では拡大処理してもPhotoshopが自動的に判断してディティールが維持されるように調整してくれます。実際に使ってみると、長編を1.4倍ぐらいにするぐらいならかなりディールが残った画像になっています。もちろん、オリジナルの3000pixelの画像と比較したら劣りますが、急バージョンの機能に比べれば雲泥の差です。
実際にこの機能についてわかりやすく比較してくれている記事があったのご紹介しておきます。
Photoshop2018 新機能 『ディテールを保持2.0』AI アップスケール(拡大) リサイズ拡大に最強機能搭載 : Lightcrew Digital-Note
さて、この機能の普通の使い方は少しpixel数を増やすことですが、元々画素数が十分の一眼カメラで撮影した写真に応用することで、更なるシャドウノイズの低減や解像感アップを実現することができます。
Step①:まずは画像の長編を1.7倍に
僕はE-M1を使っていますが、E-M1の画素数は約1600万画素です。ピクセル数にすると長編が4608pixel。このE-M1の画像の長編を、まず8000pixelに上げます。この時、《ディティールを保持2.0》を選択しておきましょう。
Step②:CAMERA RAWフィルターでノイズリダクション
続いて、画面上のメニューにある《フィルター》内の《CAMERA RAWフィルター》を選択します。
このフィルターを使うことで、Photoshopで展開しているレイヤーをCAMERA RAW(Photoshopのプラグインとして組み込まれているRAW現像ソフト)で開くことができます。
Step③:輝度40、輝度のディティール82で設定
CAMERA RAWを開いたら、ディティールを選択。その中にあるノイズ軽減で輝度を40。輝度のディティールを82に設定。
いろいろ試して見ましたが、長編の画素数を1.7倍ぐらいに高画素にした場合は、輝度のディティールは80〜85が理想です。80ぐらいにするとノイズの低減優先、85ぐらいにするとディティール維持を優先です。これは、被写体によって変わります。遠景の風景などはおそらく80〜82ぐらいが理想です。80ぐらいにすると、苔や木の質感が失われてしまいます。ただ、直線的な被写体であれば80前後の方がバランスが良いです。
ディティール最優先で行うなら、ノイズ軽減の輝度を25〜30まで下げて輝度のディティールを85ぐらいにしてみて下さい。
Step④:ピクセル数を元に戻す
ピクセル数を擬似的に高画素にし、ノイズリダクションをかけた後は画素数を元に戻します。
これで完成です。
仕上がりを比較してみると
上の画像はE-M1のISO200で撮影しシャドウ部分を2EV明るく補正した元の画像と擬似的に高画素にして元のサイズに戻したものを100%表示にして比較したものです。記事の画像で分かりにくい場合は元画像をご覧頂きたいのですが、とくに黄色の丸の比較ではノイズが消えているのが分かります。ですが、オレンジの場所のディティールはほとんど差がありません。オレンジ色の丸の右側にある木のディティールは、よーく見たらほんの少しだけディティールが消えているのが分かりますが、これは言われてよーく見てやっと気づく程度なので問題ないでしょう。
場所によってはディティールの残り方に差があり、ディティールがより鮮明になっているところもあれば若干失われているところもありますが、その差はごくわずかです。それよりも注目したいのが、ノイズの消え方です。
これだけのノイズリダクションを行うと、通常なら比較して明らかに分かる程にディティールが無くなります。下の画像は、元画像に普通のノイズリダクションをかけて比較したものです。
擬似的に高画素にしてノイズだけ少なくした画像と比較すると、元画像にノイズリダクションをかけた方は全体的にディティールが失われているのが分かります。
一般的にノイズを消せばディティールが無くなり、シャープにすればする程ノイズも目立ちますが、CAMERA RAWは優秀なのでディティールをそのままにノイズを軽減することも可能でした。しかし、新機能である《ディティールを保持2.0》を使うことでさらにディティールをそのままにノイズを軽減することが可能となります。
ノイズレスの画像ならさらなる解像感を
《ディティールを保持2.0》は、擬似的に高画素にした際にPhotoshopが自動的にディティールを維持する機能です。なので、擬似的に高画素にしてそのまま元に戻すだけででティールが高まります。
今回ご紹介したノイズを消すという方法は、《ディティールを保持2.0》を応用してディティールを高めることで、ノイズリダクションをかけても結果的にディティールをそのままにノイズを減らすという方法です。つまり、ノイズを消すという目的でなければ、さらなるディティールの向上により解像感を高めることができます。
低感度のシャドウノイズには効果があるが高感度ノイズは効果が薄くなる?
ただ、この方法は低感度時のシャドウノイズに効果があるものの、高感度ノイズには効果が薄くなります。その理由は、おそらくノイズの大きさです。低感度のシャドウノイズはノイズ一つ一つは粗くなく小さいのですが、高感度時のノイズは一つ一つが粗くなり、擬似的に高画素機にした際にノイズのディテールも増えてしまうのでしょう。ノイズが増えれば、ノイズリダクションをかけても元の画像と変化なしという結果になります。
試しにISO800の画像に擬似ハイレゾのやり方を試してみるとディティールを維持しながらノイズが軽減できましたが、ISO1600以上では効果を感じませんでした。被写体によっても変わる可能性もありますが、粒が小さいノイズに効果があると思っておいた方がいいかと思います。
そういう意味では、高感度領域ではマイクロフォーサーズよりもフルサイズの方が効果があるかもしれませんね。
最後に
マイクロフォーサーズは、求める被写界深度で撮れるレンズがあるなら高感度性能はAPS-Cやフルサイズと肩を並べます。ただ、低感度のシャドウノイズはウィークポイントでした(参照:《マイクロフォーサーズは高感度が苦手》は間違い。本当の弱点は低感度のシャドウノイズ)。
ですが、そのウィークポイントもPhotoshopの新機能のおかげで低減できるようになったことを考えると、マイクロフォーサーズの弱点がさらに消えることになります。もちろん、APS-Cやフルサイズなら手間をかけずに最初からシャドウノイズは少ないのです。そういう意味でマイクロフォーサーズは手がかかるとも言えますが、この作業はバッチ処理で複数の画像を一括処理することもできるので、面倒になる程の手間にはならないと思います。とくに、作品として一枚一枚丁寧に仕上げるという方は是非取り入れてみて欲しいですね。もちろん、僕も今後は取り入れていきます。