マイクロフォーサーズの手引き

E-M1ユーザーのカメラマンがマイクロフォーサーズを中心に書いていきます

マイクロフォーサーズのダイナミックレンジを最大限活かす撮り方




 

一般的には、マイクロフォーサーズは高感度が苦手と認識されています。しかし、マイクロフォーサーズの一番のウィークポイントは高感度ではなく低感度。そんな話を、《マイクロフォーサーズは高感度が苦手》は間違い。本当の弱点は低感度のシャドウノイズ という記事でご紹介しました。

 

マイクロフォーサーズはフルサイズと比較すると被写界深度が2段分深いです。これは、一般的に背景がボケにくいというデメリットとして紹介されますが、逆に考えれば同じ被写界深度を得たい場合でも絞り値を2段分開けられる=ISO感度を2段分落として撮影できるということになります。

 

なので、自分が得たい被写界深度で撮れるマイクロフォーサーズ用レンズが存在するという条件つきではありますが、マイクロフォーサーズは高感度性能でAPS-Cやフルサイズと肩を並べます。

 

ただ、マイクロフォーサーズはダイナミックレンジを上げる為に、シャドウノイズが少し多くなるという特徴があります。これは、写真の暗い場所のノイズが増える、又は明るく補正した際にノイズが目立つという意味です。

 

なので、マイクロフォーサーズのカメラであるE-M1を使う僕が常に意識しているのは、無駄にプラス補正をしないようにハイライト側のダイナミックレンジをギリギリまで使うという撮り方です。

 

白飛びしてほしくないハイライト部分は適正露出からプラス1段

ハイライト側のダイナミックレンジをギリギリ使う為には、適正露出をどこに持ってこればいいか?と考えて以前テストをしたことがありますが、結論からお伝えすると自分が白飛びしてほしくないと思うハイライト部分を(E-M1のファインダー内で)適正露出からプラス1で撮るのがベストだと判断しました。プラス1段で撮れば、RAW現像でマイナス補正をしても意図した階調で戻ってきます(ISO200で撮ることが前提です)。実際に写真を見ていきましょう。

 

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こちらは、先日撮影した教林坊での一枚です。ポイントとなるハイライトは建物左上のモミジですね。

 

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オレンジで囲った部分が、この写真を撮る上で僕が白飛びさせたくなかった場所です。そこで、この部分だけを見て適正露出になるように調整して、そこからさらにプラス1段露出補正をして撮影しました。この写真をRAW現像する前の写真はこんな感じです。

 

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白飛びさせたくない部分は、撮ったままの画像を確認すると少し飛んでしまってます。ですが、RAW現像を行うことで、プラス1段は許容範囲として意図した階調に戻すことができます(JPEG画像からは無理です)。また、現像前の写真でお分りになると思いますが、建物やその手前辺りもかなり暗いです。この暗さから現像してプラス補正していかないといけないので、無駄にプラス補正するのは避けたいですね。

 

プラス4/3段では階調が失われる

さて、実際にどのスライダーをどう調整しているのかを見ていきます。以下はフォトショップのCAMERA RAWで調整した内容です。

 

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基本補正では、シャドウを半段プラス補正して明瞭度をプラスした以外は微調整程度。今回の仕上げは補正ブラシによる部分的な補正が中心です。

 

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まず白飛びさせたくないハイライト部分はは、ハイライトのスライダーをほぼ目一杯マイナスにしてます。この補正で、今回の白飛びさせたくないハイライト部分は意図した階調に戻ってきます。

 

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他の部分は、全体的に1段プラスほせいをしてコントラスト若干強調させ、カラーバランスを少し暖色系に調整。

 

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そして最後に、建物とその手前部分だけを半段プラス補正しています。こうして仕上がったのがこちらの写真ですね。

 

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さて、白飛びさせたくないハイライト部分をプラス1段で撮るのがベストとご紹介しましたが、4/3段ではダメなのか?今ご紹介したのはプラス1段でRAW現像した写真ですが、おなじシチュエーションで4/3段のプラスで撮影したものを同じ条件(さらにハイライト部分をマイナス補正)で現像したものがあります。それがこちら。

 

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1/3段プラスで撮っているので全体的に明るくなります。もちろん、ハイライト部分も一緒に明るくなっているので、その分基本補正のハイライトのスライダーも目一杯マイナス補正しました。しかし、基本補正のハイライト部分補正のハイライト両方のスライダーを目一杯マイナスにしても、プラス1段で撮った写真みたいに階調が戻ってきません。並べると違いがはっきり分ります。

 

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ご覧のように、1/3段オーバーするだけで階調が戻りません。プラス1段ほ方は、基本補正のハイライトのスライダーはほとんど触っていないので、まだもう少しマイナス補正できる余裕があります。プラス4/3段の方は、プラス1段よりもハイライト部分をマイナス補正しているにも関わらず階調の戻りが悪いです。

 

ハイライト部分のダイナミックレンジを見極める

RAWデータなら、多少露出のミスがあっても調整して整えることができます。ですが、多少の誤差をカバーできるRAWデータのポテンシャルを、ミスのカバーに使うのは少々勿体無いです。

 

性能を最大限に引き出すという視点で観察すれば、手持ちのカメラのダイナミックレンジを最大限に活かすことができます。この記事で紹介した写真も、ご紹介したような撮り方をしているからこそシャドウ部の補正がプラス2段(基本補正のシャドウでプラス0.5、補正ブラシによる部分補正でプラス1.5)で収まり、鑑賞距離においてプラス補正をしたのが分からないぐらいの仕上がりになっています。

 

もし、白飛びさせたくない場所をそのまま適正露出で撮ってしまえば、シャドウ部は3段程プラス補正しなければいけません。正直、プラス3段でも丁寧に仕上げてやれば鑑賞距離でノイズが気にならない程度にすることはできますが、カメラのポテンシャルを最大限に引き出す意識は常に持っておけば余裕が生まれ、もっと厳しい環境の時でも綺麗に仕上げることができます。

 

マイクロフォーサーズでもこれぐらいの性能なので、シャドウノイズが少ないAPS-Cならもっと余裕が生まれます。フルサイズなら、最新のものでなくても十分な気がしますね。

 

カメラのポテンシャルを最大限に引き出す為に

僕が使っているE-M1の場合は、電子ファインダー上で適正露出に感じたところからプラス1段の露出補正をすることで、ポテンシャルを引き出すことができます。ただ、やり方はお手持ちのカメラによって微妙に違うと思うので、ご自身のカメラの電子ファインダーの見え方を確認しながらテストしてみて下さい。

 

E-M1の電子ファインダーは優秀なので、明るさは環境によってオートで変わるように設定してありますが、メーカーによっては世代が古いと晴れた屋外で見にくくなったりするので、注意が必要です。

 

機種によっては、ハイライトの粘りがもっと緩やかな機種もあると思います。E-M1は、1/3段オーバーするだけで急に階調が飛んでしまう印象ですね。なので、じっくり撮る余裕がない時は保険をかける意味でもプラス2/3段で撮ることもあります。

 

自分のカメラのハイライト側のポテンシャルはどの程度なのか?是非テストしてみて下さいね。