望遠レンズはボケる、という言葉はよく耳にします。実際、以前は僕もそう思っていました。ただ、同じ被写体を画角を変えて撮ってみた時に、背景のボケ量が変わっていないことに気づきました。なので、僕の今の認識は
- 焦点距離が長いとボケるが、望遠レンズはボケるというのは間違い
となっています。そこで、改めてテスト撮影を行い再現してみることにしました。
被写体の大きさと絞り値を統一して撮ってみると
まずはテスト撮影した画像をご覧下さい。
※画像内の焦点距離は35mm判換算をしたものです
※画像は中央部をトリミングしています
撮影に使ったレンズは12-100mm F4 PRO。焦点距離を変えながら、被写体の大ききさは同じになるように撮影しています。撮影時にはグリッドを表示させて、被写体である25mm F1.2 PROのピントリングの幅が同じ大きさに写るように調整しています。なので被写体の大きさはほぼ同じ、絞りも全てF4。違うのは焦点距離と撮影距離です。
ここで注目したいのが、レンズ右側に写っているキャスターです。試しに、24mmのキャスターを拡大してみます。
元の画像は35mm判換算140mmのもので、オレンジ色の丸で囲っているのが24mmの画像から切り抜いて拡大したものです。オレンジ色の枠の右側にある、140mmで撮影したキャスターと比べて見るとほぼ同じです。これは、僕の中ではボケ量は同じと感じます。
ただ、望遠レンズになることで背景は大きく写るようになります。その為、遠くまで奥行きがある写真を撮った場合は、遠くのボケているところだけが背景に収まり、結果的に背景がより大きくボケるという印象を受けることになります。
出典:Four Thirds|マイクロフォーサーズ|Micro Four Thirdsの高画質
上の画像は、マイクロフォーサーズの公式サイトで紹介されているものです。この画像の下側を見ると、焦点距離が違うだけで絞り値は同じ。先ほどご紹介した作例と条件が同じです。この画像の右下辺りにある草のボケ方を見ると、ボケ量は同じなのが分かります。ただ、焦点距離が伸びることで背景が大きく写るようになるので、比較するとよりボケているように見えます。
なぜ焦点距離が長くなってもボケ量が変わらないのか?
先ほどの焦点距離を変えて撮影したものは、焦点距離が長くなる程カメラと被写体の距離は離れていきます。背景のボケ量に影響してくる要素としては
- 絞り値(F値の数字が小さい程ボケる)
- 焦点距離(◯◯mmの数字が大きい程ボケる)
- カメラと被写体の距離(近い程ボケる)
- 被写体と背景の距離(遠い程ボケる)
この4つになります。例えば、ズームレンズで絞り値を同じにして撮影した場合は、焦点距離が長くなる(望遠になる)につれてカメラと被写体の距離が離れていきます。でないと被写体のドアップの写真なりますので。
つまり、焦点距離が長くなってボケるようになった分は、カメラと被写体が離ることで相殺されていきます。
イメージセンサーの大きさが変化しない前提なら背景のボケ量は絞り値に依存する
僕が持っているカメラは、コンパクトカメラのGRを除いてはマイクロフォーサーズのカメラしか持っていません。つまり、マイクロフォーサーズのカメラで撮っている限りは、背景のボケ量の変化は絞り値のみに影響され、焦点距離で変化するのは背景の写る大きさのみということになります。ただ、望遠レンズの方が遠くの背景が大きく写るので、より大きくボケているように見せることができます。
注意したいのは、焦点距離は確かに背景のボケ量に影響するということです。その為、例えばフルサイズの50mm F1.4とマイクロフォーサーズの25mm F1.4は同じ写る角度であっても、絞り値を揃えた場合は焦点距離が長いフルサイズの50mmの方がより背景がボケます。
最後に
- 望遠レンズで背景が大きくなること=背景がボケる
と言うなら、望遠レンズはボケると言えるでしょう。実際に、背景に奥行きがある場合は遠くのボケている背景だけ強調できるので、よりボケている印象を受けることができます。
正直なところ、定義づけとしてはどっちでもいいのですが、背景をぼかそうと思って望遠レンズを選択したのにその効果を実感しなかったという方は少なからず幾人かいらっしゃるはずです。そういった方や、今後同じような体験をされる方が今回の記事を思い出して頂ければ幸いです。