マイクロフォーサーズの手引き

E-M1ユーザーのカメラマンがマイクロフォーサーズを中心に書いていきます

7-14mm PROと12-100mm PROで漁の撮影に行った話(滋賀観光時は近江牛より...)




 

近江牛よりもビワマスを

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先日、仕事でビワマス漁の撮影に行きました。ビワマスはサケ科に属する淡水魚で、琵琶湖にのみ生息する固有種です。滋賀の醒ヶ井養鱒場では養殖のニジマス釣りが体験でき、刺身にして食べることもできますが、ニジマスに比べてビワマスは生臭さが一切ないので刺身で頂くととても美味しいです。滋賀県民の僕は、観光で滋賀に来れられる際は近江牛よりもビワマスを堪能して行って欲しいですね。なんせ、近江牛と違ってビワマスは地元以外ではあまり流通せず、1日経てば鮮度が落ちてしまう為漁師さんも毎朝その日に調理するビワマスを獲りに行かれます(普通の魚も一緒?)。つまり、滋賀に来ないと食べれないものなのです。

 

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ただ、ビワマスは非常に目が良いそうで、網の糸が見えると網にかからないそうです。なので、月の光がない時や雨の後の水が濁った時によく獲れるそうですが、それでも量が少なかったり、稀に坊主の日もあったりするそうで、滋賀に観光に来たら必ず食べられるというわけでもありません。ビワマスの価値が上がるのは、美味しいだけでなく安定して獲り続けるのが難しいという点もあるのかもしれませんね。

 

PROレンズの安心感

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さて、この日は朝4時起きで準備し5時頃には琵琶湖の上にいましたが、今回の機材もお馴染みE-M1です。レンズは7-14mm PROと12-100mm PRO。これらの組み合わせは、お祭りやイベントの撮影などでも同じです。超広角から普通の望遠まで対応したい時にはほぼこの組み合わせですね。なぜこのレンズを使うのか?理由はいくつかあります。

 

絞り込む人にとっては、フルサイズよりもマイクロフォーサーズの方が魅力的

35mm判換算14-28mmの間はF2.8で。24-200mmの間はF4で撮影することができますが、マイクロフォーサーズなのでフルサイズと同じようにはボケません。F2.8であってもフルサイズのF5.6のボケ量。F4ならフルサイズのF8のボケ量になります。ただ、個人的にはフルサイズだと逆にボケすぎるので結構絞り込みます。背景の情報も重要になる撮影が多いので、ボケすぎるのは逆効果です。

 

そういう人は、

 

 

ということで、マイクロフォーサーズの強力な手ぶれ補正やレンズの小型化などのメリットが活きてきます。

 

高倍率ズームなのに写り良し・防塵防滴良し・耐久性良しの12-100mm

また、高倍率ズームはレンズによるものの、フルサイズでF8に絞り込むよりも12-100mmのF4で撮っている方が同等以上で、オリンパス伝統の防塵防滴は雨の中でも不安なく撮影できます。鏡筒の見た目はプラスチック素材のようですが、12-100mmの開発者インタビューを見てみると鏡筒には金属のカム枠採用されてズーム時のガタがでないように設計されているということなので、乱雑に扱わない限りは耐久性も問題ないでしょう。

 

個人的には、とくに防塵防滴の安心感は大きいです。僕はスポーツのように動き回る被写体を撮影することはありませんが、砂埃や雨の中で撮影することはあります。少し前に某音楽イベントの撮影をしていた時に、終盤かなり土砂降りになりました。ですが、イベントはそのまま続行だったので、僕は頭にタオルを巻くだけでカメラもそのままで撮影していました。もちろんカメラとレンズはびしょ濡れです。ですが、何も心配せずに撮影できましたし、その後も問題ありません。

 

撮影・被写体に対する集中力が何かの要因で低下するのは、意外と写真自体の良し悪しにも影響してきます。やはり、撮影以外のことを気にしないといけないという環境は避けたいものです。

 

船の揺れも気にせず撮れる手ぶれ補正

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今回の撮影で実感したのが手ぶれ補正のありがたさ。普段から手ぶれ補正のありがたみは実感しているつもりでしたが、船の上での撮影が初めてだった僕は改めて実感しました。結構揺れてるはずなのに、ファインダー上ではその揺れが感じられないというのは撮影のストレスを無くしてくれます。今回はストレスを感じる前にそのストレスの原因がなかったので撮影に集中できましたが、船の揺れで撮影に集中できない状況だったらかなりのストレスだったでしょうね。

 

手ぶれ補正は写真のブレを防止するだけでなく、撮影時のストレスも軽減することもできるんだなというのは今回の一番の発見かもしれません。

 

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漁自体は日が昇る前に出発し、目的について作業を始めかけたら空が少しずつ青くなっていくという感じでした。この時点でISO感度は400程度。絞りはF2.8、シャッタースピードは1/80前後です。漁を行う船に同船している間は7-14mm PROのみで撮影で、被写体ブレが目立たないようにと1/100ぐらいをキープしていました。

 

ただ、手ぶれ補正が強力なE-M1なら、通常広角から超広角域での撮影は1/20もあれば十分です。普通の撮影なら、このぐらいのシャッタースピードでブレることはほとんどありません。1/10以下になってくると慎重にシャッターを切るようになりますが、1/4ぐらいなら8割ぐらいがきちんと止まります。1/4で止まらなければ自分が悪いと感じるぐらいの効きの良さです。

 

E-M1 MarkⅡでは望遠側よりも広角側での手ぶれ補正の効きの良さが性能アップしているそうですが、初代E-M1でも7-14mm F2.8 PROを使うなら十分実用的です。僕の撮影するシチュエーションでは、

 

  • ISO200
  • F2.8
  • SS 1/4

 

の設定で適正露出にならない環境というのはあまりありません。時々ISO感度を少し上げるかなというぐらいですが、美術館の暗い展示でも上記の設定で大体撮れるか、ISO感度をもう少し上げるぐらいです。今回の撮影は被写体ブレや船の揺れもあるので少し例外で、ISO400〜800の写真も2割弱ありましたが、ISO感度を1600以上に上げる写真も僅か4%。その写真はどれも辺りが真っ暗で船のライトだけで撮影するような場合のみです。

 

撮影後の現像は必須

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この時に感じていたのは、撮影後の現像が大変だろうなということ。空の青の部分と淡い夕焼け色になった空、夕焼けの中のハイライト部分を別々に仕上げないといけません。

 

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青い部分だけホワイトバランスを下げ、雲の部分だけホワイトバランスを上げ、夕焼けの中のハイライト部分だけ輝度をマイナス補正をし、船や網の部分はやや輝度をプラス補正。そんな現像を一枚一枚やっていました。

 

同じシチュエーションだったら一括補正で終わるんですが、今回はアングルも微妙に違いますし空の感じは時間が経つにつれて少しずつ変わっていきます。そうなると、一括で補正データを反映しても結局一枚一枚微調整しなければいけません。

  

現像時には、極端にホワイトバランスを下げたり上げたり、彩度をプラスしたりすることはありませんが、仕上がりの前後を見ると一目瞭然で仕上げ後の方が良く見えます(下記動画参照)。撮影時の段階で完成している写真も稀にありますが、仕事であってもプライベートであってもほんとのケースで現像を行いますね。

 

 

200mmがあれば大体の撮影に対応できる? 

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いろんな撮影で12-100mmを使いますが、このレンズは35mm判換算で200mmまでの望遠です。200mmの望遠と聞いて全然足りないと感じるか、十分と感じるかは人それぞれだと思いますが、取材やイベント・お祭などの撮影では200mmで不自由さを感じることはおそらくないです。記憶にないだけかもしれませんが、記憶に残らない程それ以上の望遠を必要としないケースが多いのだと思います。

 

もちろん、もっと望遠が必要と分かっているなら40-150mmや40-150mmをテレコン付きで使ったりしますが、仕事でこのレンズを使うことはほとんどありません。本当に、今年に入ってまだ仕事で使ったことがなく、昨年の11月頃にコンサート撮影で使ったぐらいです。むしろプライベートで使うことが多いですね。

 

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漁の撮影は、途中から別の船に乗り換えたので後半は網を引き上げる船が主役となっています。

 

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今回の漁の撮影の目的はポスター用だったので縦の写真が半分強という割合になりました。縦横どちらで撮るかは、基本的には絵になる方を優先して撮ります。ただ、仕事の撮影の時は縦横両方撮っておくと編集者やデザイナーさんが使い易いので、一応両方押さえておくことが多いです。中には《絵になる方優先でいいですよ!》という仕事もあるので、そういう時はあまり気にせずに絵作り優先で撮っていきますね。

 

漁の撮影を終えてみた感想『E-M1 MarkⅡを買う理由は見つからなかった』

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カメラやレンズの機材の購入は、必要性を感じてから買う方がその機材をより使いこなせるようになりますし、上達にも貢献します。興味があるので買う、腕の良いカメラマンが使っているからという理由で購入する場合、

 

  • 新しい撮り方・表現との出会い

 

という意味では、意義のある買い物になることもあるでしょう。ただ、必要性を感じずに買ってしまうとどうしても使いこなせずに防湿庫の肥しなってしまう可能性が高いです。過去の僕がまさに典型的なタイプだったので、一度経験している身としては必要性をきちんと理解し説明できるようになるまでは新しい機材を無駄に買うのは避けるようにしています。

 

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なので、今の機材をある程度使いこなしていると、E-M1 MarkⅡの購入する口実が見当たらないのです。スポーツなどの動く被写体をメインに撮っているならとっくに購入していると思いますが、残念ながらそうではありません。しかも、ある程度の動体撮影なら初代E-M1でも設定を最適化してやることで対応できたりします。

 

強いて挙げるならやはり強力になった手ぶれ補正でしょうか。ただ、手持ちで1秒2秒というシャッター速度が必要になるケースがほとんどないので、初代E-M1でも十分だったりします。

 

進化したイメージセンサーによる高感度撮影や低感度時の画質の向上ですが、RAWデータで比較してみると大きな差は感じられません。同じシーンでの比較はしたことありませんが、サンプルのRAWデータをダウンロードしてよーく見ると高感度性能や低感度の暗部のディティールが少し良くなっているかな?というのが分かりますが、買い換えるのは非常に悩みます。

 

 

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PhotoshopのCAMERA RAWも地味に性能アップしているので、ディティールをほとんど維持しながらノイズを軽減することができます。この機能を使う前提なら、E-M1のRAWデータから現像した写真は通常の撮影なら十分な画質になります。もちろん、低感度で3EV以上暗部を持ち上げるような現像を多用するなら話は別ですが、普通の撮影なら明るく補正しても2EVぐらいです。2EVぐらいなら丁寧に現像してやることで鑑賞距離で使える画質になります。

 

逆に考えれば、フルサイズなら手間をかけずに上質な画質が得られるので、手間をかけたくないのであればフルサイズの方がいいかもしれません。ただ、2年間使ってもイメージセンサーの掃除をしたことがないぐらい強力なゴミ取り機能や、防塵防滴性能、手ぶれ補正性能を考えると、E-M1系の安心感は大きいですね。

  

 

ちなみに、今回撮影のご依頼を下さったところでは、ビワマスを中心とした新鮮な食材が食べれるので、また受講生さんを招いた講座や撮影会で利用させてもらおうと目論み中です。

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現在はご依頼頂いた講座で講師を担当するのみで、自分が主催して行うのは少しお休みしてましたが、近いうちに少人数での撮影会・現像を中心とした講座を予定しています。今年初めにもそんなことを言ってましたが、急な生活リズムの変化で少し断念していました...。できれば、2018年の春頃には始めたいですね。