このブログでは、度々マイクロフォーサーズの特徴を触れてきました。とくに画質に関して言えば、
- フルサイズとマイクロフォーサーズの背景のボケ量は2段の差があることから、マイクロフォーサーズは常にISO感度を2段落として撮影することができる。
- 環境によってはISO感度を2段落とせることでフルサイズの優位性が相殺され、手ぶれ補正で勝るなら環境によってはマイクロフォーサーズの方が高画質になることもある。
という点が挙げられる為、僕自身の撮影スタイルではマイクロフォーサーズの方が合っており、低感度の画質でも実用的なのでE-M1を使い続けています。もちろんデメリットとして
- 低感度で撮れる環境(とくにフルサイズでISO800以下)で比較すればフルサイズの方が画質が良いこと、RAW現像耐性が良いことは明白。
- 手ぶれ補正の恩恵を受けにくい、シャッター速度を上げて被写体の動きを止めるような撮影ではフルサイズの方が良いケースが多くなる。
- マイクロフォーサーズで35mm判換算でF2.8のボケ量をズームで得ることは不可能なので、フルサイズでF2.8通しのズームレンズを使いたい場合はフルサイズ一択、又はAPS-CでシグマのF1.8のズームを使うという選択肢しかない。
という点も挙がる為、フルサイズとマイクロフォーサーズは適材適所で選択していくのが適当であると考えています。
さて、これを前提にしてこの記事でご紹介したいのは、タイトルの通り【マイクロフォーサーズがフルサイズと同等以上の画質になる条件】です。今回は、この条件をDxomarkのスコアを比較しながら解説していきます。
マイクロフォーサーズのスコアはそのままでフルサイズのスコアを2段落としてみる
Dxomarkでは各カメラのイメージセンサーの性能を数値化しています。レンズの影響が無く、RAWデータの素の性能が分かるのでカメラ選びの際は参考になりますね。過去、5DⅡからE-M1に変えた時も、Dxomark通りの変化だったので個人的にも信頼しています(とは言え、厳密な比較は実写を見てみないと分かりませんし、Dxomarkでテストされていない項目もあります。なので、あくまでDxomarkのスコアは参考程度に見て頂く必要があります)。
さて、マイクロフォーサーズとフルサイズのボケ量の差は2段で、マイクロフォーサーズは常にISO感度を2段落として撮影することができます。そこで、DxomarkでE-M1のスコアとフルサイズのスコアを2段落としたものを比較してみるとどうなるか?個人的にも驚く結果が出ました。
E-M1とα7Ⅱの比較
出典:Sony A7 II vs Olympus OM-D E-M1
まずSNR18%の比較。これはDxomarkの基準で許容できるダイナミックレンジや色再現性も考慮した一定の画質が得られる感度をグラフになります。そのままのスコアを見てみると、
E-M1:757
α7Ⅱ:2449
数字だけ見ると当然の結果です。ただ、α7Ⅱの感度を2段落としたグレーのグラフを見てみると、ほぼ重なります。
出典:Sony A7 II vs Olympus OM-D E-M1
続いてダイナミックレンジ。個人的に今回の記事を書くに当たって一番驚いたのが、α7Ⅱのダイナミックレンジが意外にも高くないことです。もちろん、低感度同士で比較した場合は、
E-M1:12.7
α7Ⅱ:13.6
と差があり、α7Ⅱの13.6という数値は優秀な部類です。ただ、全体的にみるとE-M1と近い感じで、α7Ⅱの感度を2段落としたグレーのグラフを見てみると高感度になる程差が開いていきます。ただ、E-M1は暗部ノイズが多くなることと引き換えにダイナミックレンジを広げているので、その差を約1EVと仮定するならE-M1が少し優れる程度で大きな違いはないかもしれません。
出典:Sony A7 II vs Olympus OM-D E-M1
続いては色の再現性。これも、単純に同じ感度で比較した場合はα7Ⅱの方が良いですが、α7Ⅱの感度を2段落としたグラフを見てみると、E-M1の方が良好になります。
E-M1とα7Ⅱの比較から分かること
実際に比較してみると、α7ⅡのISO感度を2段落とした際にはE-M1の方がダイナミックレンジや色再現が少し良好になります。もちろん、同じ感度で比較すればフルサイズであるα7Ⅱの方が良好なのは明白です。しかし、α7ⅡでISO感度800以上を多用するなら、ISO感度を2段落とせるマイクロフォーサーズで撮影するのと大きな差はないかもしれません。
また、E-M1をE-M1 MarkⅡにして比較すると、全ての項目でE-M1 marⅡが良好になり、そこにE-M1 markⅡの最大6.5段という強力な手ぶれ補正(12-100mmを使用した場合)を考慮すると、手ぶれ補正が活かせる環境ならE-M1 markⅡの方が魅力的に感じますね。
もちろん、冒頭で触れたように低感度で撮影できる環境であったり、被写体の動きを止めるような撮影ではフルサイズの方が有利になります。また、Dxomarkのスコアだけで決めつけられるわけではありません。ですが、条件によっては安価なフルサイズと同等以上になるケースも多々あると思われるので、自分の撮影スタイルを考慮して機材を選択しないと、
- フルサイズを買ったのにあまり意味がなかった
ということになりかねませんので注意です。
ちなみに、鑑賞距離から見るならマイクロフォーサーズの低感度も十分綺麗だったりします。100%に拡大して比較すればフルサイズとマイクロフォーサーズの差ははっきり分かりますが、普通の見方をすれば問題ありません。もし低感度を多用したりシャッター速度を速くする撮影が中心で、且つモニターで100%表示にして鑑賞するのが目的であればフルサイズの方がいいかもしれませんが、そうではなく写真を普通の鑑賞方法で楽しむ方であればあえてフルサイズにするメリットはそこまで大きくないと思います。
E-M1とα7RⅡの比較
出典:Sony A7R II vs Olympus OM-D E-M1
さて、続いてはE-M1とα7RⅡの比較もご紹介しておきます。α9のDxomarkのスコアが出ましたが、まだα7RⅡが一番スコアが高いので比較してみました。まずSNR18%ではほぼ同じ。
出典:Sony A7R II vs Olympus OM-D E-M1
ダイナミックレンジは、E-M1はさらに1EV程低く見積もると考えると僅かに劣る感じになります。
出典:Sony A7R II vs Olympus OM-D E-M1
色再現もほぼ重なりますね。
フルサイズのメリット・マイクロフォーサーズのメリットを改めて振り返る
フルサイズで撮影するメリットは
- 35mm判換算でF1.4の絞り値で撮影できること(マイクロフォーサーズの限界は35mm判換算F2のボケ量)。
- シャッター速度を落とせない環境での高感度撮影に優位性があること。
- 三脚を多用できる等、低感度での撮影が多いならマイクロフォーサーズにないダイナミックレンジとSN比で撮影できること。
- F2.8通しのズームレンズが使えること(マイクロフォーサーズのズームレンズの限界は35mm判換算F3.5のボケ量)。
となるでしょうか。どれか1つだけでも当てはまるなら、フルサイズで撮る選択肢は有意義なものになるかと思います。しかし、この中の1つにも当てはまらないのであればマイクロフォーサーズという選択肢も出てくるのではないかと思います。改めてマイクロフォーサーズのメリットを箇条書きしてみると、
- フルサイズに対して常に2段分ISO感度を落とせるので、フルサイズでISO800以上を多用するならマイクロフォーサーズと差があまりない。
- 手ぶれ補正が強力なので、シャッター速度を落とせるような撮影や三脚が使えない環境ではフルサイズよりもメリットが大きいケースがある。
- 望遠域の小型軽量化と動体撮影のバランスを考えるならマイクロフォーサーズ。
となります。
ちなみに、望遠域のレンズを使わないならソニーと比べてマイクロフォーサーズに小型軽量のメリットがあるとは言えないと考えています。その点に関してはこちらの記事でご紹介しています。
ただ、ソニーに比べて小型軽量のメリットが大きくなくてもオリンパスを使いたい理由がもう1つあります。それが、イメージセンサーにゴミがほとんどつかない点です。僕はE-M1を使い出して約2年ですが、今までイメージセンサーの清掃をしたことがありませんし、ゴミが写り込んでいるのを見たのは2回だけです。その2回も、一度電源をオンオフするだけで消えました。イメージセンサーにゴミがつくことが無くなると、かなりストレスフリーになります。
正直なところ、僕自身マイクロフォーサーズであるE-M1を使うまではフルサイズ信者であったと今になっては思います。フルサイズが絶対と思っていると、マイクロフォーサーズの情報などもスルーするのでマイクロフォーサーズの良さも見えませんでした。ですが、とあるきっかけでE-M1を購入し使い続けるうちにマイクロフォーサーズのメリットデメリットがより鮮明に見えるようになりました。
ちなみに、このような記事を書くとオリンパスのステマや信者だと言われかねませんが、僕はオリンパスから一銭ももらっていませんし、むしろこの考えならニコンや富士フイルムのAPS-Cのカメラが一番良いということになります。ただ、このような考え方もあるよと記事にすることで、カメラ選びの考え方・選択肢の幅が広がればいいなと思っています。
※追記
この記事を書いた後に、Dxomarkのスコアはあてにならないと言うご指摘を頂きましたので、実写でも比較する記事を書いてみました。結論からお伝えすると、この記事通りという印象がより強くなりましたね。よろしければ、こちらの記事もご覧になってみて下さい。