現在はE-M1 MarkⅡが発売され、動体撮影もかなり強化されたのでこのカメラに満足されている方はとても多いです。ですが、初代E-M1でも設定さえ最適化してやればそこそこの動体撮影も撮ることができます。そこで今回は、初代E-M1の動体撮影能力を最大限発揮する為の設定を解説してみたいと思います。
原則、カメラがC-AFに集中できるように配慮する
追尾AFは使わない
E-M1で動体撮影を行う際のフォーカスモードは以下の二つです。
・コンティニュアス AF(C-AF)
・追尾AF(C-AF+TR)
コンティニュアスAFは選択したエリアで被写体にピントを合わせ続けるモード。一方、追尾AFなら選択したエリアから被写体がズレても、全点のフォーカスエリア内でカメラが判断して自動で追尾してくれます。この二つのフォーカスモードがありますが、基本的には追尾AFは使わない方がいいです。その理由は、E-M1がC-AFに専念できるようにする為です。追尾AFに設定するとカメラがAFエリアの判断をしないといけなくなるので、C-AFへの集中力が下がります。その結果、AF精度が犠牲になります。後述する手振れ補正をオフにする理由も同じです。
手ぶれ補正もオフにする
C-AFは被写体にピントを合わせ続ける設定ですが、この時に手ぶれ補正をオンにしているとそれだけで精度が落ちます。感覚的には、40-150mm F2.8 PROの望遠側で時速60km程度で走る車がフレームに収まるぐらいの距離感で撮影した場合、手ぶれ補正オフで85%、手ぶれ補正ONで60%の精度になります(C-AFで秒間9コマの連写時)。
その理由は先ほどと同じで、手ぶれ補正がオンだとC-AFに集中しきれないからです(メーカーに確認済み。E-M1 MarkⅡは手振れ補正のオンオフでは実感する程の差は出ないという回答でしたが、MarkⅡでも追従できない時があるので試してみる価値はあるかもしれません)。被写体の動くスピードが遅い場合は手ぶれ補正オンでも演算処理が追いつくようですが、素早く動く被写体を捕える場合は手ぶれ補正をオフにしないと演算処理が追いつかなくなってしまいます。
その辺りの話は、別の記事でまとめているので併せてご覧下さい。
シングルで合わせるか?グループで合わせるか?
実際に撮影する場合、被写体を安定的にファインダーで捉えられる場合はシングルターゲット(一点)でピント合わせを。シンプルな背景で被写体が速く動くような場合はグループターゲットでピント合わせを行う方がいいと思いますが、これは被写体によって使い分ける必要があります。人などの細い被写体の場合は、ファインダーで安定して捉えることができてもグループターゲットで捉える方が安心です。
ファンクションボタンに測距点モードのホームポジションを登録することができるので、通常は一点、必要があれば瞬時にグループターゲットに切り替えられます。
連写は必ずHで
E-M1のファームウェアのバージョンが3.0になった時、連写Hでのコマ数が9コマ/秒になり被写体の追従性能が向上しました。ただ、このバージョンから像面位相差が機能するのは連写Hの時だけになりました。
ある時、僕自身が連写Lでファインダーを覗いていた時、ふと像面位相差の枠がファインダー内に出てこないことに気づきました。連写Hでは枠が出てきます。この経験から、おそらく連写Hの時だけ像面位相差が機能していると予想しメーカーに確認をとったところ、予想通りバージョン3.0以降は連写Hでしか像面位相差が機能しないということだったので注意が必要です。
具体的な設定
以上のポイントを押さえた上で、具体的な設定を解説します。まず、僕はマイセット1と2にそれぞれ動体撮影用の設定を登録しています。
マイセット①
・絞り優先F2.8
・露出補正+0.3
・ISO感度オート
これは、晴れた時の屋外でテレコンなしで撮影する場合の設定です。晴れた屋外で被写体を止めて撮影する場合は、絞り優先F2.8で十分にシャッター速度が速くなります。
マイセット②
・シャッター速度優先1/500
・露出補正+0.3
・ISO感度オート
今度はシャッター速度優先ですが、これは少し暗い環境で動体撮影を行う場合です。暗い環境なら、シャッター速度を1/1000にしておけば絞りはF2.8ぐらいで後はISO感度がオートで切り替わります。
どちらのマイセットも、最初はグループターゲットにしておきレバー1のコンティニュアスAFにしてあります(どんな被写体でも無難に対応できるように)。また、マイセット登録する時フレームレートを高速にしておきます。そうすることで、普段はフレームレート標準でMFアシストのピーキングを利用している場合でも、マイセットを呼び出した時だけフレームレートが高速になります。マイセット登録の時は忘れないようにしましょう。
注意
ファンクションボタンにピーキング機能を割り振ると、フレームレートは強制的に標準になります。C-AFでの撮影をメインで行う人は、ファンクションボタンにピーキング機能を割り当てないようにするか、C-AFでの撮影の前にピーキングを外しておきましょう。
E-M1の像面位相差AFは縦線しか検知できない
さて、ここまでE-M1で動体撮影する際の設定に関してお伝えしてきましたが、E-M1の位相差AFの特徴としては縦線検知のラインセンサーしかないということも理解しておかなくてはいけません。つまり、電車や窓の縦の線しか検知できません。この縦線しか検知できないラインセンサーが苦手とするのは、フレーム内を素早く横切っていくような動きです。フレーム内を横切ってしまうと縦の線が流れてしまうので検知が難しく、そうなると検知しやすいのは横の線になります。しかしE-M1には横線は検知できません。
なので、フレーム内で横切るような撮影はなるべく避けた方がいいでしょう。ただ、縦位置で撮影する時はランセンサーが90度向きを変えるので、横位置よりも縦で撮る方が撮りやすくなるという傾向もあります。縦位置でフレーム内を横切るという撮り方はしないかもしれませんが...。
E-M1 MarkⅡでは像面位相差AFが全てクロスセンサーになったので、縦線も横線も検知できるようになりました。実写レビューなどを見ていると、かなりの動体追従性能なのが確認できるので、オリンパスの300mm F4やパナソニックの100-400mmなどで動体撮影をメインに行う人にとっては魅力的なシステムになるでしょうね。
ケースバイケース
動体撮影を行う時の基本的な設定ですが、動体撮影と言っても被写体や表現によって得たいシャッター速度などは変わります。僕の場合は犬や鳥などの動きの速い被写体を撮ることはまずないので以上のような設定にしていますが、被写体によってはもっと速いシャッタースピードが必要になることもあるので、状況に合わせて設定は変えてください。基本的にはマイセットに登録をしておくのが便利でしょう。僕はマイセット1を前面の下のボタンに、マイセット2をレンズぼファンクションボタンに登録しています。
E-M1の場合はレバーでAFモードを変えられますので、レバー1にコンティニュアスAF。レバー2にシングルAFを登録して瞬時にAFモードを変えていますが、これも使いやすい方でいいと思います。
最後に実写での解説です。下記の記事は40-150mm F2.8 PROにテレコンをつけて小学校の運動会を撮影した時の話を記事にしています。
こちらの記事で紹介している写真は全て40-150mm F2.8にテレコンをつけて撮影したものです。被写体がある程度の大きさになった時は、テレコンをつけていても被写体をよく追従してくれますね。
ちなみに、下記の写真は曇った日の体育館で撮影したもの。雨だったので会場が園庭ではなく小学校の体育館に変わりました。天候は雨が降るぐらいの曇り空でしたが、E-M1に40-150mm F2.8で普通に追従してくれましたね。夜の体育館は試したことはありませんが、曇った日の体育館ぐらいなら問題ないと実感しました。
下記の写真は14-150mm F4-5.6 Ⅱで撮影したもの。被写体が少しゆっくりだったこともありますが、このレンズもよく追従します。写りは決して良いとは言えませんが、小型軽量、防塵防滴、最大撮影倍率が0.44倍(35mm判換算)、速いAF速度と、写りと解放絞り値の暗さ以外は万能なレンズです。12-100mm PROを手に入れてからは使用頻度が低くなりましたが、絶対手放さないレンズの1つです。