マイクロフォーサーズの手引き

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ニコンのZ7・Z6は《一眼レフとミラーレス一眼のノウハウは違う》ことを物語っている?


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先日、ニコンから新しい規格のミラーレス一眼である Z7とZ 6 が発表になりました。開発発表から多くのカメラユーザーが注目していたニコンの新しいカメラが登場しましたが、全体的には少し否定的な感想が多い印象です。その理由は主に6つ。

 

  • ダブルスロットではない
  • バッテリーの保ちが悪い
  • マウント仕様を公開しない=サードパーティの参入が厳しい=レンズの選択肢が純正レンズしかない為、ニコンのレンズ資産を持っていない人には導入ハードルが高い
  • 瞳AFがない
  • レンズの防塵防滴が【配慮】という表現
  • ライムラプスを売りにしているのにバッテリーがUSB給電できない
  • 全体的に驚きのないスペック

参照:ソニー使いの私が見た、ニコンZ7 / Z6とキヤノンに期待したいこと | studio9Nikon Z7が登場した今、まだNikon D850は買いのカメラか?両機をじっくり比較する | とるなら~写真道楽道中記~  7とZ 6。ニコン使いのネイチャーフォトグラファーが感じた良いところと悪いところ | 登山と写真で仕事をしている人。

 

もちろん全体的な使い勝手や操作性、一眼レフ用レンズもストレスなく使えるAF性能や、ファインダーやD850譲りの堅牢性と防塵防滴性能と良いところももちろんあるんですが、驚きの少ないスペックで値段もZ7が約40万というのがニコンユーザーをも頭を抱える要因となっているようです。

 

それもこれも、先発のソニーが高機能であるα9α7RⅢ、そしてより安価なカメラとしてα7Ⅲを販売しているせいです。ハイエンドモデルはもちろん、より安価なα7Ⅲでもダブルスロットを採用し、全てに瞳AFを搭載。バッテリーも改善し保ちもよくなっています。

 

ソニーのこれらの製品が世に出る前にニコンのZ7・Z6が出ていれば大きなニュースとなっていたのは間違いありませんが、すでにソニーが似たようなスペックのカメラを出している為にどうしても印象が薄れがちです。実際には、バッテリーの保ちもAF性能も十分実用的で、操作性も良好、見やすいファインダーで良いカメラなのは間違いないと思いますが、このタイミングでは仕方ありません。

 

一眼レフとミラーレス一眼では省電力設計にも違いがある?

さて、カメラの特徴や良し悪しは他の方のページを参考にするとして、今回の一番の印象はやはりノウハウの差です。といってもここからの内容は全て憶測になってしまうのですが、例えばバッテリー。

 

Z7のバッテリーはニコンのD850と同じEN-EL15系のバッテリーです。新しくEN-EL15bになりUSB充電できるようになりましたが、D850のEN-EL15aも使えます。系統は一緒で1900mAh。対してソニーのα9などのバッテリーNP-FZ100は2280mAh。

 

  • Z7:1900mAh(7.0V)=ファインダー使用時330コマ
  • α9:2280mAh(7.2V)=ファインダー使用時480コマ

 

この比較をした場合、α9の2280mAhをベースに考えると1900mAhでは400コマの計算になりますが、ニコンの場合は330コマ。電圧の差は7と7.2で約3%ですが、それを考慮しても十分ニコンの方がコマ数が少ないです。もし単純比較できるのであれば、バッテリー容量が同じだったとしてもニコンの方が撮れる枚数が少ないことになります。

 

D850なら1840コマ撮れる仕様が、ミラーレス一眼になった途端に330枚に減ってしまう。一眼レフとミラーレス一眼だと、省電力のノウハウも違ってくるんだろうなと感じたポイントです。

 

ちなみに、キヤノンのEOS Rのバッテリーは7.4vで2000mAh。ソニーを基準に考えると2000mAhで420枚ほど撮れる計算になりますが、仕様では370枚。バッテリー性能を見ていると、ソニーは頭1つ分抜きん出ているのかもしれませんね。

 

ボディのサイズありきで焦って設計し、想像以上に放熱が上手くいかずダブルスロットにできなかった?

プロからも愛用されているニコンなので、ダブルスロットの重要性は分かりきったことだと思います。ダブルスロットを採用するかしないかと考えたら、採用するに決まってます。なのに今回のZ7・Z6でダブルスロットが採用されなかったのは、

 

採用できなかった

 

と考える方が納得がいきます。その理由は、ダブルスロットのスペースを確保できなかったから。ではなぜ確保できなかったのか?ここからも憶測の域を出ない考察ですが、ニコンZ7の特徴として動画の性能が挙げられます。

 

正直なところ動画に関してはサッパリなのですが、動画の性能がアップし情報量が増えることで消費電力が増加し、カメラ内部の温度が上がってしまうのは間違いありません。カメラ内に溜まった熱は放熱させないといけませんが、一般的にボディを大きくすることで放熱は容易となります。

 

ただ、単純に大きくしすぎると一眼レフと大きさが変わらなくなり本末転倒です。ミラーレス一眼のメリットである小型化とハンドリングの良さを考慮しながら適度に小型化していくわけですが、同時に動画性能を上げると放熱の設計は一朝一夕では通用しなくなります。

 

昔から動画のノウハウを持っているパナソニックでさえも、動画性能が高評価であるGH5を開発する際にボディの大型化は避けられませんでした(参照:『熱との闘い』を制し、プロフェッショナル動画性能をさらに革新~「LUMIX GH5」。GH5の場合は、従来の放熱設計のままだと1.35倍のボディサイズになったそうですが、設計を見直してボディサイズの大型化を1.13倍までに抑えました。

 

ニコンの場合は、今まではそこまで動画に力を入れていたわけではありません。加えて、ミラーレス一眼よりも一眼レフの開発に主軸を置いていた為、放熱ノウハウはパナソニックなどのミラーレス一眼での動画のノウハウがあるメーカーに比べるとどうしても劣ってしまうはずです。

 

その状況での開発手順です。マイナビニュースの記事を見てみると、

 

Z7やZ6のボディサイズは、「このぐらいのサイズでないとユーザーに受け入れられないだろう」という判断から決められたそう。まず大まかなサイズありきで、そこに開発陣が必要な機能を詰め込んでいった、という流れで開発が進められたとのことです。

引用元:プロ向けモデルも準備中!? ニコンに聞くミラーレス戦略 | マイナビニュース

 

というのが目につきます。まずは光学性能を高めることを0ベースで考えた場合、マウントの内径は55mm、フランジバックを16mmにするのがベストとなり新マウントが誕生。その後、ユーザーを想定しボディサイズを設定。そこに機能を詰め込んだ。

 

ただ、ニコンが誤算だったのは思った以上に小型のボディに機能を詰め込むのが難しかったということ。これは、ニコンに技術がないというのではなく、時間がなかったのではないかと思います。通常ミドルクラス以上のカメラは2〜3年ぐらいの開発期間が設けられていますが、2017年2月には新規格のミラーレス一眼が登場するような発言をしています。この前後に開発がスタートしていたとしたら約1年半ですが、2017年9月にはハイエンドモデルのD850が登場しています。人員を集中できるようになったのをこの頃と考えると、実質開発期間は1年前後。

 

ノウハウが他社に劣る上に開発期間も短い状況では、開発期間内にボディサイズの選択肢を増やすことは難しい。だから最初にボディサイズを決めて詰め込もうとしたが、実際には詰め込むのが難しく思った以上にスペースをとられ、ダブルスロットにできなかったのではないでしょうか。

 

瞳AFもやはりミラーレス一眼のノウハウの賜物?

最近のミラーレス一眼には、どのメーカーにも顔認識と瞳AFがあります。とくにソニーのα9、α7RⅢ、α7Ⅲの世代の瞳AFはかなり精度が高く、動く人物であってもピントを合わせ続けるぐらいです。

 

ニコンがフルサイズミラーレス一眼に参入するとなると自然と競合がソニーになるので、瞳AFの搭載がポイントになるのはニコンも分かりきっているはずです。それでも搭載しなかったのは、まだノウハウが少ないからではないでしょうか。又は、厳しい基準を設けることで、まだそこに達していないと判断したのかもしれません。

 

テスト動画などを見ていると、Z7の顔人認識AFで実際の撮影で困ることはあまりないと思いますが、ソニーの瞳AFと比べてどの程度の性能差になるのか。詳しいレビューが気になりますね。

 

最後に

市場がどのような反応を示すのか?

マウント仕様を公開しない点についても最後に触れておきます。ソニーのEマウントは仕様が公開され、サードパーティのメーカーがEマウント用のレンズを多く開発しています。これにより、選択肢が多くなりソニーのカメラが買いやすくなりました。

 

ですが、Zシリーズのレンズロードマップを見ているとまだまだです。レンズの選択肢がないとボディを買う人が少なくなり、そうなるとフィードバッグが返ってきません。フィードバックがないと来年発売予定?の プロフェッショナルモデルが中途半端に終わらないか...。これが一番最悪なシナリオだと思います(ダブルスロットでない時点でプロには手が出しづらい為、最悪のシナリオの一歩は踏み出しているかもしれません)

 

ソニーとは違い、ミラーレス市場がこれだけ成熟した現在ならニコンは短いスパンでシェア拡大を実行しなければいけません。その為には、マウントの仕様を公開して少しでも早くレンズの選択肢を増やしカメラを買いやすくする必要があると思っている人はかなり多いと思うのですが、ニコンの選択がどう転ぶのか気になるところです。

 

ニコンはアダプターを使うことで既存のFマウントレンズを使ってくれと思っているのかもしれませんが、それならレンズのラインナップが揃うまでもう少し待つというユーザーは多いと思います。一眼レフ特有の前ピン後ピンに悩まされていた層はすでに瞳AFが優秀なソニーや他のミラーレス一眼に移った人も多いですし、今ニコンの一眼レフで満足している人が前ピン後ピンの問題から解放される為にZ7やZ6を選択するということは少ないと思います。

 

アダプターをつけても一眼レフと同等の性能で撮れるということなので、今のニコンユーザーがカメラボディをミラーレス化し、順次レンズを専用のものに変えるという選択肢も十分ありかと思いますが、ダブルスロットでないこととバッテリーの保ちが悪いことでそれも見送る人は多いかもしれません。

 

全体的に驚く性能ではないとは言え、実際に使ってみればその操作性や基本性能の高さは十分分かるはずです。それだけに、

 

  • バッテリーの保ちの悪さ
  • ダブルスロットではないこと
  • レンズランナップがまだまだなのにマウント仕様を公開しないこと

 

など、足を引っ張る要素の方が目についてしまい非常に勿体ない発表になってしまいました。

 

残念なプレゼンはニコンの体質なのか、企業内にも流れる「やってしまった感」がそのまま表に出てきたのか?

最後に一つ気になったことですが、今回のニコンのプレゼンは悲壮感があるというか凄く固いというか、ただ暗記した内容を棒読みしているような感じということでSNSでも騒然となっていました。なぜワクワクするようなプレゼンがされなかったのか?ニコンの企業としての体質的なものなのか、焦って出したけど仕様がイマイチなのをニコン自身もよく理解している現れなのか。カメラとは関係ないと思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、カメラの残念なところが目立つ中、さらに悪い印象を与えかねないとも思います。ニコンとしては来年のカメラが本命なのかもしれませんが、スタートからかなり躓いてしまった印象ですね。

 

とは言え、本当にカメラとしては良い仕上がりですし、ニコンも相当考えての発表だと思うので、ニコンがZシリーズをどう育てていくのか今後のニコンの動きは要チェックですね。