写真上達の本質を考えてみる

写真講師を続けてきたカメラマンの思考を記事にしていきます

糖質制限食で動脈硬化になる人の共通点?


 

糖質制限は2008年頃に注目され、現在でも認知度は高くなっていると思います。実際に、糖尿病患者の食事療法として注目されており、米国糖尿病学会は2013年に《成人糖尿病患者の食事療法に関する声明》で糖質制限食を認めているそうです。世界的に見ても、糖尿病の短期的・中期的な食事療法として糖質制限食は広がりつつあります。

 

僕自身も糖質制限食に対しては比較的肯定的でした。脳の栄養はブドウ糖だけでなく、ケトン体をエネルギー源として利用することができます。これは、1920年から難治性小児てんかん治療に用いられているケトン食が、90年という歳月によって安全性が確認されており、英国立医療技術評価機構のガイドライン2011年版に採用されていることを考えれば問題にする必要はないでしょう

 

 

  • 糖質制限はエネルギー源としても問題ない。
  • 血糖値の上昇も抑えられるので糖尿病患者の食事としても理想的。
  • 一般的に動脈硬化のリスク要因は全て改善される。

 

 

このように、一見すると良いことばかりの糖質制限なので、近年はダイエットとしても注目されています。ただ、デメリットは本当にないのか?という気持ちがどこかにありました。そんな時にふと目についたのがいくつかあります。

 

過度な糖質制限による高タンパクな食事は動脈硬化を進行させる?

http://www.pnas.org/content/106/36/15418.full

 

↑ こちらの論文は、ハーバード大による《マウスによる糖質制限の実験》です。論文は上記リンクから読めますが、要約してくれているサイトがあったのでご紹介します。

 

日本ローカーボ食研究会 :: 厳しい“糖質制限食”の血管障害

 

要約すると、

 

  • 条件:マウスの12週間(人間では約6〜7年)の実験は、炭水化物(C)・脂質(F)・タンパク質(P)の比率を変えた3つのグループの観察によって行われた。低炭水化物高タンパクのAグループは《C:F:P=12:43 :45》。一般的な西洋の食事であるBグループは《C:F:P=43:42 :15》。日本食に近いCグループは《C:F:P=65:12 :20》。
  • 結果①:AグループはB・Cグループに比べて動脈硬化の範囲が優位に広い。
  • 結果②:血清脂質・血糖値・酸化ストレスマーカー・炎症マーカーは3つの食事群で差がない。
  • 結果③:Aグループでは骨髄と末梢血の内皮前駆細胞、つまり血管再生のマーカー細胞の数が有意に低下していた。
  • 結果④:Aグループのマウスから分離された細胞の活性化セリン・スレオニンキナーゼは有意に低下していた(この酵素は細胞の増殖、運動、生存に深く関係している)。
  • 結論:低炭水化物高タンパク質の食事における動脈硬化は、一般的な心血管障害マーカー(血糖、コレステロールなど)とは無関係におきる。これは、血管へのダメージはそれぞれのグループにおいて同じであっても、高タンパクな食事により血管の修復能力が落ち、結果的に動脈硬化を招きやすくなるという仮説が立てられる。

 

論文を最後まで見てみると、動脈硬化になる要因は主に2種類あるようです。1つは、有害な刺激。これは一般的に言われる、高脂血症、酸化ストレス、炎症などの要因です。もう1つは、これらの有害な刺激に対する血管の修復機能の低下です。

 

つまり、食生活の乱れによる刺激が強すぎてもダメで、逆に血管の修復機能が落ちるぐらいの低炭水化物高タンパク質な食事もダメということです。低炭水化物高タンパク質な食事で、いくら見た目は痩せたとしても、普通の血液検査が良好な数字になったとしても、それと動脈硬化の進行具合は全く別であると考えなければいけないでしょうか。

 

低炭水化物がダメなのか?高タンパク質がダメなのか?

ここで一つ疑問が生まれます。先ほどの論文では《おそらく高タンパクが原因》と書かれていますが、体に悪影響なのは低炭水化物と高タンパク、一体どちらなのか?ということです。先ほどの論文では、低炭水化物高タンパク質の食事が、なぜ血管細胞のマーカー細胞を低下させたのか?なぜ細胞の活性化セリン・スレオニンキナーゼが低下したのか?ということまでは書かれていません。

 

ですが、難治性小児てんかんの治療として用いられている、低炭水化物になるケトン食の安全性が確認されていることを考えると、やはり高タンパク質が原因なのかもしれません。ケトン食における炭水化物、脂質、タンパク質の比率は、

 

  • 脂肪3〜4:炭水化物+タンパク質で1

 

という割合です。一般的に、炭水化物5%、脂質83%、タンパク質12%程度になるそうです(参照)。ケトン食自体が管理が大変で、持病の有無と副作用をしっかりチェックして行う必要があるそうですが、炭水化物5%というケトン食で安全性に問題がないとされているのであれば、先ほどの論文の炭水化物12%というのは動脈硬化の原因としては考えにくいでしょうか。

 

そもそも糖質制限の目的は、糖尿病患者にとっては血糖値のコントロール。ダイエット目的ならインスリンのコントロールであることを忘れてはいけない

一般的に糖質制限は、炭水化物を抜いて他のお肉や魚、野菜などは自由に食べていいという印象を持っている方が多いかと思います。これは、糖質制限の目的からすれば間違いではありません。糖質制限の目的は、血糖値を下げることや、血糖を処理するホルモンであるインスリンのコントロールを目的としているからです。

 

血糖値を下げるホルモンであるインスリンは、同時に脂肪細胞の合成を促します。つまり、過剰な糖質を食べてインスリンが出るから肥満になる。つまり、

 

  • 糖質を制限すればそもそも血糖値は上がらない
  • 血糖値が上がらないならインスリンは分泌されないので太らなくなる=痩せる

 

という原理です。血糖値が上がらないなら糖尿病患者にとっては理想の食事になりますし、インスリンの分泌が抑えられるのでダイエット効果も高くなります。なので、インスリンのコントロールという概念が抜け落ちて、糖質を制限すればいいということだけが広まっていきました。

 

本来、糖質を制限するのは手段であって、目的は

 

  • 血糖値の上昇を穏やかにする
  • インスリンの分泌を抑えるようコントロールする

 

というものです。なので一般の人であれば、糖質を摂取しても血糖値とインスリンのコントロールができれば糖尿病予防にもダイエットもできます(糖尿病患者の為の糖質制限は、根本的に糖質を制限することに意味があります)。

 

 

インスリンコントロールダイエットについてはこちらの記事で以前紹介していますが、今回ご紹介した高タンパク質の食事が動脈効果を招きやすくするという結論が正しいのであれば、炭水化物は少し少なくする程度に止め、野菜を多めに脂質、タンパク質量はバランスよく摂取するのが理想となります。その上で、インスリンをコントロールする。糖質制限という考え方をインスリンのコントロールという考え方にシフトさせた方が、健康なダイエットを行えるのではないでしょうか。

 

また、あくまで高タンパク質と動脈硬化の関連は相関関係です。なので、高タンパクは必然的に脂質も増えるから、脂質が原因である可能性もあります。糖質制限で動脈硬化になるケースとならないケースがあるようですが、その違いは摂取する脂質の質の違いという可能性も十分考えられます(後述)。

 

理想的なタンパク質量は?

もし高タンパクの食事は動脈効果を招くと結論づけられる場合。では、高タンパク質の定義はどこからなのか?先ほどのの論文では、カロリー摂取量の45%がタンパク質で動脈硬化が進行しやすくなっていましたが、どの程度まで抑えれば動脈硬化の心配はないのか。

 

糖質制限食の第一人者である高雄病院理事長の江部康二氏は、自ら糖尿病になったのをきっかけにすでに取り組んでいた糖質制限をさらに研究し、糖質制限食の体系を確率したとされています。

 

江部氏は約15年間スーパー糖質制限食(C:F:P=12:56:36)を実践しているそうですが、このスーパー糖質制限では炭水化物12%でタンパク質が36%となっています。江部氏がタンパク質36%で動脈硬化が進んでおらず健康でいらっしゃるなら、このラインは大丈夫と言えるでしょうか。

 

先ほどの論文で一番動脈硬化が進んでいなかったのは日本食に近いCグループでしたが、このブループのタンパク質量は20%です。個人的な感覚にはなりますが、36%のタンパク質量では不安なので25%ぐらいまでには抑えておきたいなというのが正直なところです。

 

一般の人におけるタンパク質25%の量は?

身長172cm、体重60kg、年齢29祭の僕の場合、デスクワーク中心の1日に必要な摂取カロリーは約2300kcalです。撮影に出るような仕事の時は約2700kcalでしょうか。ちなみに、身長160cm、体重50kg、年齢30歳の女性の場合は、デスクワーク中心で約2000kcal。普通の活動量で2200kcalぐらいです。

 

僕の場合、1日2500kcalで計算してみると、

 

  1. 2500kcalの25%は625kcal
  2. タンパク質1gのカロリーは4kcal
  3. 3食合計のタンパク質量は約156g
  4. 1食平均50gまで。

 

ということになりますが、日本人の食事摂取基準2015年版で推奨されている大人のタンパク質の摂取量は男性で60g。女性で50g程度です。なので、あくまで上限を150gにするというだけであって、150gを目標としないといけないことではありません。男性も女性も、60gを摂取していれば十分なので、それは覚えておいた方がいいでしょう。

 

ちなみに、タンパク質は、

 

  • ハンバーグ1つ:約15g
  • 卵1つ:約7g
  • 豆腐1丁:約20g(一人前のサイズは約1/4なので5g程度
  • からあげ中3つ:約14g
  • セブンの揚げ鷄:約16g
  • ファミリーマートのファミチキ:約12g
  • ローソンのLチキ:約13g
  • マグロの刺身1切れ:約5g
  • サーモン・ブリの刺身1切れ:約3g
  • 鮭の塩焼き1切れ:約20g

 

などなど、 人によっては軽くオーバーしてしまう人もいるかもしれませんが、足りていないという人も意外と多いかもしれませんね。

 

動脈硬化の原因は、高タンパクよりも加熱された油?

日本人の食事摂取基準2015年版では、タンパク質の上限は設けていません。タンパク質の上限を儲ける必要がある根拠がないという判断らしいです。タンパク質の上限を儲ける必要がないのであれば、高タンパク質は問題ないということになります。

 

ここで、面白いデータを見つけたのでご紹介します。下のデータは、洋風食(糖質制限食と類似)と和風食でどこまで動脈硬化の発症率に差が出るのか?というものです。

 

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出典:洋風食(炭水化物制限食に類似)の食事は脳梗塞・心筋梗塞になりやすい。|脳梗塞・心筋梗塞の完全予防法|真島消化器クリニック

 

こちらは、真島消化器クリニックさんの882の症例で、洋風食の肥満と普通の人。和洋食で肥満と普通の人。和風食で肥満と普通の人の6つのグループに分けたものです。イベントと歴というのが脳梗塞や心筋梗塞になったかどうかという意味ですが、一番多いのは洋風食の肥満者26.5%。一番低いのが和風食の肥満者2.6%と約10倍の差になっています。

 

このデータで面白いのが、洋風食の人は普通体型の人でもイベント率が高いということです。逆に、肥満であっても和風食であればイベント率が低くなります。むしろ、和風食の普通体型の人の方が痩せているにも関わらずイベント率は高くなっています。このデータからは、低炭水化物高タンパク質の食事では一見普通の体型でも動脈硬化指数は高くなるということです。つまり、糖質制限を行うよりも和風食の普通の食事の方がいいということになります。

 

和風食が体に良いのは、食べているものが自然と野菜や穀物、魚になり、劣化した油が自然と減るからかもしれません。もちろん、和風食で肥満になるのは動脈硬化にはなりにくいいものの、高血圧や糖尿病を招く要因となるので過食は控えましょうと真島院長は注意されています。

 

また、飽和脂肪酸の摂取量が少ないと逆に脳卒中のリスクがた高まるという研究もあるそうです。飽和脂肪酸を多く摂る方が脳卒中のリスクが減るというのは驚きです。ただ、この研究によると飽和脂肪酸の摂取の増加と心筋梗塞の発症リスク増加は関連性がある為、飽和脂肪酸の摂取量は多すぎても少なすぎてもダメという結論に落ち着くそうです。

 

この研究が正しいとすると、飽和脂肪酸が少ない和食の場合は脳卒中のリスクが上がります。しかし、和食の場合は魚や野菜が多くなる為か、結果的に動脈硬化のリスクが減るのかもしれませんね。

 

糖質制限によってHbA1cが減少しても動脈硬化は改善されない?

ヘモグロビンA1c(HbA1c)は、過去2ヶ月の平均血糖を反映させるので、糖尿病の検査や経過観察時にチェックされる項目です。このHbA1cは、心筋梗塞や脳梗塞などの原因となる動脈硬化の進行具合とも関連性があり、一般的にHbA1cが高い場合は虚血性心疾患や脳梗塞のリスクが高くなると言われています。

 

このHbA1cは、糖質制限食により改善することができます。糖質を制限すれば血糖値が下がるので、結果的にHbA1cの数値は下がります。しかし、HbA1cが低い時にも脳梗塞・脳出血のリスクは上がることも報告されています。これは、下記のリンク先による真島消化器クリニックさんのデータを見ても似通っている部分があることに気づきます。

 

糖尿病でA1c値を下げても脳梗塞・心筋梗塞のリスクは低下しない|脳梗塞・心筋梗塞の完全予防法|真島消化器クリニック

 

このデータから推測できるのは、HbA1cが一度でも高くなってしまえば、動脈硬化のリスクは簡単に無くならないということではないということです。HbA1c自体は過去2ヶ月の平均血糖値として観測できる為、糖質制限によりHbA1cの数値は早くに改善できても、一度高まった動脈硬化はすぐに改善されないということではないでしょうか。

 

 

 

「糖質制限食」開始から3年2ヶ月後に脳梗塞になり、食習慣が発病を早めたと思われる症例。|脳梗塞・心筋梗塞の完全予防法|真島消化器クリニック

 

また、上記リンクをご覧になると、農耕民族である古代ペルー人と狩猟民族のミイラを調べたところ、低炭水化物高タンパク質の食事をしている狩猟民族の方が動脈硬化が進んでいたそうです。

 

糖質制限が必要な人ともし行うなら気をつけたいこと

いろいろ調べていくと、加熱した油を制限しなければ糖質制限を行ったとしても動脈硬化は改善されないのは間違いなさそうです。なので、原則として加熱した油は適量にしなければいけません。その上で、今現在太っていてダイエットをしたいなら、糖質制限はベストな選択肢になるかと思います。それでも、動脈硬化に気をつけるなら

 

  • 加熱した油はなるべく避けること(1日60g〜100g程度のタンパク質を摂る場合でも、全て揚げ物や加熱したお肉ではなく、卵や魚、豆腐などの大豆製品など、偏りをなるべく無くす。青魚も多食すれば動脈硬化を進行させる可能性が高いので、魚は白身魚を中心にする
  • 糖質を抑えた場合タンパク質の増量は程々に
  • 野菜を多めに

 

この3つは気をつけたいところです。

 

何事も、バランス良くが一番でしょうか。お肉や揚げ物も食べないと脳卒中のリスクが上がる。かと言って食べ過ぎたら心筋梗塞のリスクが上がる。なので、飽和脂肪酸の摂取量も適量にして、不飽和脂肪酸が含まれる魚や野菜をバランスよく食べているのが一番なのかもしれませんね。

 

 

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