マイクロフォーサーズの手引き

E-M1ユーザーのカメラマンがマイクロフォーサーズを中心に書いていきます

マイクロフォーサーズの25mmは35mm判換算で50mm相当なだけで50mmになるわけではない




 

僕自身プライベートでも仕事でもマイクロフォーサーズ(MFT)で撮影をしている為、ブログのネタもマイクロフォーサーズが多くなります。なので、度々

 

  • 35mm判換算で◯◯mmに
  • フルサイズとの被写界深度差は2段分なので、マイクロフォーサーズのF0.95はフルサイズのF2のボケ量とほぼ同じ

 

などの表現が登場しますが、この表現に対して

 

焦点距離25mm F0.95のレンズなら、焦点距離は25mmのままで背景のボケもF0.95のまま。変わるのは画角ですよ。

 

という指摘を頂きました。この指摘に対して思ったのは、全くその通りということです。何も間違ったことを言ってるわけではないので、僕も《その通りですね》としかお答えのしようがありません。ただ、ある程度カメラについて理解のある方はそれを前提にした話をしますし、前提にするのが当たり前という感覚で今までブログの記事を書いていたなと気付かされたので、今回はなぜ僕が

 

  • 35mm判換算で◯◯mmに
  • フルサイズとの被写界深度差は2段分なので、マイクロフォーサーズのF0.95はフルサイズのF2のボケ量をほぼ同じ

 

という表現を用いるのかを解説してみたいと思います。

 

35mm判換算で表記する理由

メーカーHPやカタログで必ず出てくるのが35mm判換算です。この言葉を用いる理由は、画角をすぐに理解できるようにする為です。どういうことかと言うと、一眼カメラはイメージセンサーの大きさで一般的に3つの規格に分けることができ、イメージセンサーの大きさが変われば同じ焦点距離50mmのレンズを使ってもそれぞれ写る角度が変わってしまいます。

 

代表的な3つのイメージセンサーは、

 

  • フルサイズ
  • APS-C
  • マイクロフォーサーズ(MFT)

 

です。実際に重ねてみると下のような画像になります。

f:id:photographerti:20170828165032p:plain

 

この中の一番大きいサイズであるフルサイズが35mm判と言われます。35mm判は36 x 24mmのサイズになりますが、フィルム時代はこのサイズのカメラが一番スタンダードでした。

 

そして、例えば標準レンズと言われる50mmのレンズを使った場合。50mmはフルサイズの場合対角線に約45度写りますが、上の画像をご覧頂ければ分かるように同じ50mmでもAPS-Cでは写る範囲が狭くなります。マイクロフォーサーズならさらに写る範囲が狭くなります。

 

写る範囲を画角と言いますが、各イメージセンサー毎の50mmの画角を見ていくと、

 

 

  • フルサイズの50mm:約45度
  • APS-Cの50mm:約30度
  • マイクロフォーサーズの50mm:約25度

 

 

となりますね。正直なところ、同じレンズなのにカメラによって画角が変わるというのは面倒くさいです。そこで、フィルム時代からスタンダードな規格であった35mm判を基準に考えよう!ということで35mm判換算という言葉が使われるようになります。APS-Cやマイクロフォーサーズは同じレンズでも写る角度が変わってしまうので、

 

このレンズは、フルサイズ(35mm判)で◯◯mm相当のレンズを使う時と同じ画角になりますよ。

 

という意味で、35mm判換算◯◯mmと表現するんです。

 

35mm判換算で画角の認識をスムーズにする理由

35mm判換算での焦点距離が分かれば、そのレンズがどれぐらいの画角かが分かります。では、なぜそこまで画角の認識をスムーズにしなければいけないのか?それは、画角が変化することで写り方が変わるからです。

 

こちらの画像をご覧下さい。

 

f:id:photographerti:20170829104708p:plain

 

f:id:photographerti:20170826140538p:plain

 

f:id:photographerti:20170826140621p:plain

 

これは、画像の右上にも書いてあるように35mm判換算で24mm、50mm、100mmの画角で撮り比べたものです。被写体であるレンズはほぼ同じ大きさに写っていますが、24mmと50mmでは写り方が違っています。そして、背景の写る角度も変わっています。24mmより100mmの方が、背景の写る角度が狭くなっていますよね。

 

このように、画角が変わることで被写体の写り方や背景の写りこむ角度が変わってしまいます。写り方が変わるということは、自分の撮りたい写真がイメージ通りに撮れる画角を事前に選択しなければいけないということです。画角を選択できないということは、マグレで撮れるのを待つということと同じです。自分が良いなと思う写真が撮れる確率を上げるには、この画角の変化による写り方の変化をしっかり理解しておく必要があります。

 

同じ画角に合わせたらフルサイズよりもマイクロフォーサーズの方が背景がボケない理由

さて、フルサイズとマイクロフォーサーズでは、同じ50mmを使っても

 

  • 約45度
  • 約25度

 

と写る角度が大きく変わります。なので、マイクロフォーサーズのカメラでフルサイズの50mm相当の画角で撮ろうとすると、25mmを使う必要があります。50mmより広角の25mmで撮ることで、マイクロフォーサーズでもフルサイズで50mmを使う時と同じ画角になります。

 

そして、焦点距離は背景のボケ量に影響されるので、《焦点距離が長くなる=望遠になる》ほど背景がボケやすくなります。

 

  • 25mmよりも50mmの方がボケる。
  • 50mmよりも100mmの方がボケる
  • 100mmよりも200mmの方がボケる

 

ということですね。

 

なので、フルサイズで50mm F1.4のレンズとマイクロフォーサーズの25mm F1.4のレンズは、画角と絞り値が同じであっても背景のボケ量が変わってきます。より焦点距離が長いフルサイズの50mm F1.4の方が同じF1.4でもより背景がボケるということです。

 

マイクロフォーサーズでもフルサイズで50mm F1.4で撮る時と同じボケ量を得る方法はないのか?

フルサイズの50mmとマイクロフォーサーズの25mmは同じ画角になります。ですが、絞り値がF1.4と同じでも背景はフルサイズの方がよりボケます。その理由は、焦点距離が50mmと25mmと違うからです。

 

では、マイクロフォーサーズの25mmで、フルサイズの50mmと同じボケ量で撮ることはできないのか?結論からお伝えすると、フルサイズで撮る時よりも絞り値を2段分開けることで、フルサイズと同等の画角で撮った場合でも同じボケ量になります2段差になる理由は後述)。つまり、

 

  • フルサイズの50mm F1.4のボケ量=マイクロフォーサーズの25mm F0.7のボケ量

 

ということになります。

 

ただ、25mm F0.7というレンズは存在しません。マイクロフォーサーズで一番明るいレンズは25mm F0.95です。このレンズなら、フルサイズで50mm F2で撮った時と同等のボケ量で撮ることができます。

 

f:id:photographerti:20171022122954j:plain

まとめ

35mm判換算は、あくまでフルサイズでの【〜相当】という意味であり、実際の焦点距離は変わりません。そして25mm F1.4のレンズであれば、背景のボケ量も25mmでのF1.4のボケ量です。ただ、各規格毎に覚えるのが面倒なので、全て35mm判を基準として換算し考えるだけにすぎません。その結果、25mmのレンズは35mm判換算50mm相当になり、背景のボケ量も35mm判換算でF2.8相当になると言えます。

 

ちなみに、フルサイズとマイクロフォーサーズの背景のボケ量=被写界深度の差は2段というのは、被写界深度を計算すると分かります。

 

f:id:photographerti:20170828145723p:plain

 

f:id:photographerti:20170828145732p:plain

出典:被写界深度の計算 〜各種カメラ・フィルム・レンズによる被写界深度の違いを一覧表で比較〜

 

この表は被写界深度を計算できるサイトでフルサイズの50mmとマイクロフォーサーズの25mmで比較した場合の結果です。被写体も固定して計算してみると、フルサイズのF2.8とマイクロフォーサーズのF1.4が同じになるのが分かります。

 

F2.8とF1.4の差は2段なので、画角を揃えるという条件でフルサイズのボケ量をマイクロフォーサーズで得る為には、2段分絞り値を開ける必要があります。他の記事でも触れていますが、考える視点を被写界深度にしてみると、

 

同じ被写界深度を得ようとした場合、マイクロフォーサーズの方が絞りを2段分開けられる為、暗い環境ではISO感度を2段分落とすことができる。

 

という風にも考えられます。つまり、マイクロフォーサーズは高感度撮影が苦手とよく言われますが、自分が得たい被写界深度で撮れるレンズがマイクロフォーサーズにあるなら、フルサイズと比較しても高感度撮影は差がなくなるということです。

 

この時、背景のボケは焦点距離を長くして稼げばいい、という指摘が時々出てきますが、焦点距離が変われば画角が変わり、画角が変われば写り方が変わります。撮影の原則として、画角を容易に変えてしまうと自分が撮りたいイメージからどんどんかけ離れていくので、この考え方は基本的に成立しません。強いて言えば、ただ背景が大きくボケればいいだけなら、焦点距離を長くすればいいという考え方は理にかなったものになりますが、上級者になればなるほどその考えは受け入れ難いものになるでしょう。

 

最後に

ちなみに、35mm判以外の規格のレンズは、画角を分かりやすくする為に大抵35mm判換算での表記がありますが、それは35mm判よりも大きな規格であっても同じです。例えば、ペンタックスは645Zというカメラを販売していますが、このカメラは35mm判よりも一回り大きな43.8×32.8mmというイメージセンサーを採用しています。

 

そして、この645Z用のsmc PENTAX-D FA645 55mmF2.8ALを見てみると、

 

f:id:photographerti:20170828143806p:plain

出典:smc PENTAX-D FA645 55mmF2.8AL[IF] SDM AW / 標準レンズ / 645マウントレンズ / レンズ / 製品 | RICOH IMAGING

 

画面右下に35mm判換算43.5mmと表記されています。

 

このレンズも、正確に言うなら、

 

焦点距離は55mmであって43.5mになるということではない、あくまで35mm判で43.5mmのレンズを使う時の画角になるという意味。

 

ということです。ちなみに、このレンズの場合はフルサイズで43.5mmF2.8のレンズで撮るよりも少し背景がボケます。その理由は、もうお分かりですよね。

 

  • 写る画角が同じでも焦点距離が55mmと長いから

 

ということです。