マイクロフォーサーズの手引き

E-M1ユーザーのカメラマンがマイクロフォーサーズを中心に書いていきます

なぜE-M1の手ぶれ補正をオフにするとC-AFの精度が1段増すのか?メーカーに聞いてみた!




 

以前、たまたまE-M1に40-150mm F2.8 PROを使って動体撮影のテストをしていた時の話です。その時に、被写体を横に追い掛ける時に手ぶれ補正が邪魔をして、一瞬ファインダーが横に揺れる現象がありました。この現象が嫌に感じた僕は、高速なシャッタースピードで撮るんだから手ぶれ補正はいらないだろうということで手ぶれ補正を切って撮影したんです。

 

手ぶれ補正を切ればファインダーの安定感は若干失われてしまいますが、被写体を横に追いかける時にファインダーが横に揺れる現象が無くなったので、連写して被写体を追い掛けるのはやり易くなりました。

 

その直後です。手ぶれ補正を切った方がC-AFの精度が一段と良くなることに気づたのは。

 

E-M1の画像処理エンジンの演算性能はそこまで高くない

この現象から推測したのは、E-M1の画像処理エンジンTruePic VⅡは手ぶれ補正とC-AFを両立して被写体を追従する演算性能が高くないということです。感覚としては、40-150mm F2.8 PROの150mmで時速60km程度で走ってくる車を連写H(C-AFで秒間9コマ)で撮影した場合、

 

  • 手ぶれ補正オフで85〜90%
  • 手ぶれ補正オンで60%

※レリーズ優先ONで撮影

 

程度の合焦率になります。連写中の手ぶれ補正補正はがデフォルトでオフになっていることを考えると、連写機能を最大限に発揮するには連写中の手ぶれ補正はオフにしてねというのがオリンパスの本音でしょう。レリーズ優先をオフにするとピント合焦率がそのまま連写速度になると思うので、オリンパスの言う通りということになります。

 

そこで、実際にオリンパスに問合せをしてみたところ、やはり推測通りE-M1の画像処理エンジンでは演算処理に不可がかかって少しC-AFの性能が落ちるという回答でした。

 

もっと遅い被写体を追従するなら手ぶれ補正がオンになっていても問題ないのでしょうが、素早く動く被写体に対しては手ぶれ補正の演算も一緒に行っていたらC-AF性能が発揮されないのでしょうね。ちなみに、この合焦率はテレコンをつけた時も同じです。テレコンをつけていても、手ぶれ補正をオフにすればテレコンなしと同じぐらいのC-AF性能になりました。

 

個人的には、手ぶれ補正をオンにすることで撮像素子に当たる光が安定し、像面位相差AFの能力がより発揮されるというイメージを抱いていましたが、E-M1の場合は演算能力が落ちるせいか、C-AFの精度が低下するという結果になるようです。

 

また、E-M1は像面位相差センサーがイメージセンサーに埋め込まれていますが、E-M1の像面位相差AFセンサーの密度では手ぶれを補正した時に若干被写体を見失う可能性があるという回答も一緒に頂きました。僕個人的には、手ぶれ補正オンの方が安定するので像面位相差AFの性能が高まるイメージがありますが、ピクセル単位で補正をしていること考えるとそれも有り得るのかなとも思えてきます。

 

その点、E-M1 MarkⅡは画像処理エンジンもⅡからⅢに進化し、演算性能は飛躍的に高まりました。その為、E-M1 MarkⅡでは手ぶれ補正をオンにしたままでも十分C-AFの演算性能は維持されているはずですが、E-M1 MarkⅡで手ぶれ補正をオンオフにした時のC-AF性能にどこまで差が出るのか。気になるところですね。

 

ちなみに、メーカー曰くMarkⅡでは像面位相差AFの密度も高くなっており、手ぶれ補正を両立できる画像処理エンジンなのでC-AFの性能の変化を体感することはないだろうという回答でしたが、E-M1 MarkⅡでも追従性が悪いケースでは手ぶれ補正をオフにしてみるとまた結果が変わるかもしれませんね。

 

画像処理エンジンのリソース分配は撮影者が上手くコントロールせよ

さて、この発見から僕が常に意識していることは、カメラの画像処理エンジンを過信せずに、画像処理エンジンのリソース分配は自分が考えるということです。もちろん、最新のカメラはそんなこといちいち考えなくてもいいのかもしれませんが、原則として撮影者がカメラをコントロールするという意識は常に持っておく必要があるでしょう。

 

自分のカメラの性能を把握し、どう扱えばどんな能力を発揮してくれるのか?自分がイメージする写真を撮る為には、どのようにカメラの能力を引き出さないといけないのか?その意識は、どんなにカメラが優秀になったとしても変わることはないと思います。10年20年経てば、画像処理エンジンのリソース分配なんか考えなくてもいいようなカメラが登場してくるかもしれませんが、道具を扱う者が道具を使い熟す意識を持たなければ、良い写真を意図して撮るのは難しいのではないでしょうか。

 

画像処理エンジンにどの程度負荷がかかると性能がどうなるか?

最新のカメラは画像処理エンジンも優秀なので、画像処理エンジンに任せっきりにしておいても大丈夫な場面は多いかもしれません。しかし、撮影環境が厳しくなった時に可能な限り性能を最大限発揮できるよう、画像処理エンジンの負荷テストをしておくと道具を扱う自分自身も迷いなく撮影に集中することができるかもしれませんね。

 

とくに連写やC-AFの性能を求める人はテストしておくといいかと思います。一般的には、

 

  • 高感度ノイズ低減
  • 明暗差を低減する機能キヤノンならオートライティングオプティマイザー

 

などの機能を全てオフにすることで、連写性能を落とさずに撮影できることが多いです。

 

ちなみに、レンズ内手ぶれ補正の場合は基本的にレンズ内で演算処理が行われます。レンズには電力供給のみになるので、動体撮影等を行う場合はカメラの画像処理エンジンに負荷のかからないレンズ内手ぶれ補正の方が最適という考え方もありますね。

 

そういう意味では、キヤノンニコンがボディ内手ぶれ補正ではなくレンズ内手ぶれ補正を充実させた理由が少し分かるかもしれません。