マイクロフォーサーズの手引き

E-M1ユーザーのカメラマンがマイクロフォーサーズを中心に書いていきます

一週間でピアノを流暢に弾くという課題は難しいですか?カメラも同じです




近年、写真を趣味にしていろんなカメラやレンズを変われる方が増えています。カメラも、小型軽量な高級コンパクトやミラーレス一眼が普及したことで、女性のユーザーもよく見かけるようになりました。それに伴い、写真講座・教室も増えています。僕が住む滋賀県でも、地方にも関わらずいろんなところで写真が学べるようになりました。

 

  • 写真を楽しむユーザーも増え、写真を学べる場所も増えた。

 

それ自体は、非常に喜ばしいことです。

 

ただ、あまり写真上達の難しさを語られることはありません。むしろ、誰でも簡単に、すぐにプロみたいな写真が撮れます、という紹介されることが多いですが、実際はそんな簡単なことではありません。

 

良い写真を意図して撮る為に必要な練習量

シンプルに例えるなら、

 

  • ピアノを流暢に弾けるようになって下さい。

 

ということです。一枚の良い写真を意図して撮影するということは、ピアノを流暢に弾けるようになる為に必要な練習量と同じぐらいの練習量が必要になります。実際に、「ピアノを流暢に弾けるようになって下さい」と言われたら、普通に考えて数ヶ月は最低でも必要です。練習時間が仕事の行き帰りや休みの日に少し行う程度なら、個人的には半年あっても自信がありません。

 

しかし、カメラで考えるともっと簡単そうに思えますよね?なぜでしょうか?

 

写真の落とし穴はとりあえず写ってしまうこと

最近のカメラは優秀です。なので、カメラ任せにしてシャッターを切れば、明るさが合い、ピントが合い、色合いもおかしくならずに写真が撮れてしまいます。それ故に、写真上達の本当の難しさに気づきにくくなっています。しかも、時々マグレで良い写真が撮れてしまうこともあります。そうなるとますます上達への道のりは遠くなります。

 

そうなれば、良い写真を意図して撮るには正直なところ程遠いです。ピアノで例えるなら、ただ鍵盤を叩いているだけに過ぎないにも関わらず、練習もせずに良い写真を撮ろうという欲が出て、ただシャッターを押すだけになってしまいます。

 

ピアノの鍵盤をただ叩く。それだけなら誰だってできます。カメラも同じです。シャッターを押すことは誰にでもできるんです。しかし、ピアノで流暢に弾くことが普通の人にとっては難しいのと同じで、本当は良い写真を意図して撮るのは簡単なことではないのです。

 

画家が書きたい絵をイメージできないのに筆が走るわけがない

もう1つの例えを紹介します。画家を想像してみて下さい。画家は、書きたいイメージがあって初めて筆を取ります。ですが、その画家の頭の中に書きたいイメージがないとどうでしょうか?イメージが無ければ、当たり前ですが何を書けばいいか分かりません。カメラも同じです。撮りたいイメージがない状態では、何枚撮っても良い写真が撮れるわけがないのです。

 

写真はシャッターを切ればとりあえず写ってしまうので、素敵な被写体を見つけてレンズを被写体に向ければとりあえず撮れます。ただ、それではただ撮っただけの記録的な写真にしかなりません。

 

良い被写体を見つけたら、それをどう表現すれば良い写真になるかをイメージしなければいけません。そのイメージが浮かばないのであれば、練習してイメージできるようになるしかありません。

 

 

仕上がりをイメージできる=ピアノを流暢に弾ける

シャッターを切らなくても仕上がりがイメージできるようになる為には、写真がどのような要素で構成されているかを明確に理解することです。そして、その要素が変化すれば写真がどう変化するのかを知ることです。

 

写真を構成する要素が分かれば、そしてその要素が変化すればどう写真が変わるのかが理解できれば、シャッターを切らなくてもイメージすることが可能となります。この、イメージできるようになるというのが、写真の練習の目的です。そして、ピアノを流暢に弾けるようになるという目的と同じです。

 

ピアノを弾けると言っても、そのレベルは様々です。とりあえず弾けるようになったというレベルもあれば、弾けるのは当たり前でその曲の表現に拘るレベルもあります。上を見たらキリがありませんよね。

 

写真の仕上がりがイメージできるようになるというレベルも、上を見たらキリがありません。イメージの質も、イメージできる種類の数も、その人のレベルによって様々です。仕上がりがイメージできてもとりあえず構図を整えたちょっと良い写真しか撮れない人もありますし、同じ環境なのにそんな写真が撮れるのか!?と誰もが驚くような写真が撮れる人もいます。それは、イメージのレベルの差です。

 

上を見たらキリがない世界でも上の方のレベルの人は、写真を初めて数ヶ月の人が同じ環境に居たとしても、想像もつかないようなイメージを浮かべそれを実際に写真で表現していきます。

 

上達する為には正しい基礎練習を繰り返すしかない

実際の写真講座や教室では、あまりこのような話はされません。こんな風に紹介したら、参加者が減るからです。ですが、写真で上達しようと思うなら、この事実に直面してた上で正しく学び正しく練習するしかありません。

 

もちろん、こんな小難しいことを考えなくても上達していく人は上達します。しかし、そんな人はごく一握りの人です。ですが、ごく一握りの人でないと上達しないということではありません。正しく学び、正しい練習を繰り返せばほとんどの人が上達していきます。

 

僕の写真講座では、すぐにプロみたいなに撮れるなんてことは絶対に言いません。むしろ、地味な基礎練習を繰り返すしかないと言ってます。楽して上達できる方法も教えません。そもそも、そんな方法はありません。あるのは、地味な基礎練習の繰り返しです。

 

 

僕が写真講座でテクニックをほとんど紹介せず基礎練習についてしか解説しないのは、テクニックが表現の幅を広げる手段の一つに過ぎ無いからです。テクニックよりも、表現の幅の元を作る為の基礎練習の方が大事です。もちろん、表現の幅を広げられるだけの元が身についた人にとっては、テクニックを学ぶことで新しい発見があります。それを知っているか知らないかで、写真表現に大きな差が生まれるのも事実です。ですが、物事には順番があります。

 

イチロー選手だって、毎日の素振りは欠かしません。フィギアスケーターの羽生さんだって、メダルをたくさんとっているにも関わらず、今行っているのは徹底した基礎練習の繰り返しです。

 

何事も基礎の繰り返しが一番大事なんです。