- カラーマネジメント
- カラーキャリブレーション
- ICCプロファイル
などなど、写真をやっていると一度は聞いたことがあるかもしれません。そして、パソコンとプリントの色がなかなか合わないという経験をされた方も多いかと思います。この色のズレを可能な限り無くして、モニター間やモニターとプリンターでの色表現を統一させることをカラーマネジメントシステム(CMS)と言いますが、カラーマネジメントシステムを理解するのは初心者の人には難解です。
結論から言えば、カラーマネジメントシステムというのは
画像の色を一旦色見本に置き換え、モニターやプリンターでその色見本をなるべく正確に表現できるようにしておくことで、どんなモニターやプリンターであっても色表現を統一する。
というものです。個人的には、この表現が一番分かりやすいです。
ですが、僕も過去にいろいろ調べたことがありましたが、本当に丸一日かけて調べても自分がしっかり理解できたと思えないぐらいややこしかったです(笑)。各サイトによって微妙にニュアンスが違っていたりするので、余計に理解するまでに時間がかかりました。実際には、丸二日ぐらいひたすら調べて調べて、いろんなサイトで解説されているのを読んでやっと理解することができました。
そこで今回は、僕自身すんなりと理解できなかったカラーマネジメントシステムの概念をなるべく分かりやすく、
【この記事さえ読めば初心者でもほぼ理解できる】
ということを目標に解説してみたいと思います。
なぜ、同じ写真でもモニターやプリンター毎に色が変わるのか?
カラー写真を撮影して、SNSやブログに公開する。今の時代は当たり前のことではありあますが、同じ写真であっても人それぞれ違った色を見ています。なぜ違う色を見ているのか?
理由①:モニターの経年劣化・個体差・性能差=そのモニターが我流で表示している
一つ目の理由は、単純にモニターの性能差ということです。モニターも経年劣化により色表示がおかしくなりますし、個体差も0ではありません。また、メーカーや機種が違えば元々表示できる色の性能差もあります。なので、例え値段が良いモニターでも買ったばかりのモニターを使うだけでは正しい色や階調が表現できていない可能性があります。一言で言えば、買ったばかりのモニターはそのモニターが我流で色を表示しているということになるのです。
ですが、色を我流で表示されると困りますよね。そこで、正しい色表示にする必要があります。その正しい色表示をする為に行うのがモニターキャリブレーションです(モニターキャリブレーションはi1 display Pro等のモニターキャリブレーションツールを使って行います)。
※正しい色表示が行える性能を持ったモニターであることが前提となります。一般的な普通のパソコン等は、前提である色表示性能が低いので、モニターキャリブレーションを行っても限界があります。
理由②:モニター同士やプリンターとやり取りする時に色見本がない
二つ目の理由としてはモニターやプリンターの間で色見本がないということです。例えば、単純に赤色で例えるとこんな感じになります(例えなので、色ズレを大きくして分かりやすくしています)。
モニターは赤(R)・緑(G)・青(B)の光を混ぜて色を表示しています(R 255・G 255・B 255なら白。全てが0なら黒になります)。この3色の光の量=出力(%)を変えることで様々な色を表現していますが、先ほどお伝えしたようにモニターの経年劣化・個体差・性能差により発色はそれぞれ異なるので、パーセントによる出力では上の画像のようにそれぞれのモニターの色がズレてしまいます。50kgの人の10%と、60kgの人の10%では重さが変わる、と例えれば分かりやすいかと思います。
ですが、モニター間のやりとり、又はモニターとプリンターのやりとりの間に色見本が存在していれば色のズレを最小限にすることができます。イメージとしてはこんな感じです。
一旦色見本に置き換えてやれば、それに従えばいいので色の統一が可能となるのです。この色見本に一旦置き換えてから各出力先の色の再現性を高めることをカラーマネジメントシステムと言います。そしてこのカラーマネジメントを実現しているのがICCプロファイルというものです。
ICCプロファイルというのは3つあります。
① 画像に埋め込まれるカラープロファイル
※ 一般的に【WEB用のsRGB】と【商業印刷用のAdobe RGB】の二択。
② モニターを色見本通りに表示させる為のモニタープロファイル
※ メーカー支給のものは鮮やかに表示させたりコントラストが強く出る傾向があり、個体差や経年劣化等もあるので、測定器を使って独自に作成するのが理想。
③ プリンターで色見本通りに印刷する為のプリンタープロファイル
※ メーカー支給のもので大体モニターと同じ色合いになるが、厳密な色管理に拘るのであれば測定器で独自に作成するのが理想。
画像にはsRBGやAdobe RGBといった色空間を決めるカラープロファイルがありますが、画像をパソコンのモニターで見る時はパソコンが画像のカラープロファイルを色見本に変換させてから、その色見本を元に表示させています。この時、その画像を見るモニター独自のモニタープロファイルを適応させておけば、ほぼ正しい色が確認できてるということになります。
ICCプロファイルを含めたイメージはこんな感じです。
独自のモニタープロファイルが必要になる理由は、先ほども触れた個体差や経年劣化によるズレを修正して正しい色を見れるようにする為です。また、メーカー支給のモニタープロファイルでは鮮やかになったりコントラストが強くなる傾向があるからです。その為、独自のモニタープロファイルがないと、画像を色見本に変えたとしても色表示がズレたまま閲覧することになります。しかし、(専用の測定器が必要になりますが)しっかりモニターを測定して自分のモニター独自のモニタープロファイルを作れば、自分のモニターの個体差や経年劣化のズレが修正され、色見本通りに見れるようになるということです。
最近のパソコンなどはカラーマネジメントシステムが働くものが多くなりましたが、独自のモニタープロファイルが無ければカラーマネジメントシステムが働いていても正確な色を確認することができません。
そしてプリンターにも、色見本通りに印刷できるようにプリンタープロファイルをプリント時に指定することで、モニターで見ている画像の色合いを可能な限り正確に表現することができます。プリンタープロファイルの場合も測定器を使って独自にプリンタープロファイルを作成することが理想ですが、メーカー支給のプリンタープロファイルを適応させることでもモニターで表示している色に近い色をプリントすることができます。
ちなみに、先ほどのイメージ画像のパソコンAとパソコンBのRGBの出力が違うのにお気づきでしょうか。カラーマネジメントを行うと見える色は同じでもRGBの光の量=出力(%)はそれぞれのモニターで違います。それぞれのパソコンが自分のモニタープロファイルしっかり把握し、自分の個体差や懸念劣化等の癖に合わせてRGBの出力を変えることで、色見本をほぼ正確に表現することができるようになるということです。
カラーマネジメントシステムを行うにあたって必要なものと手順
ここまで、モニター間やモニターとプリンターの間で色がズレる理由と、そのズレを無くす方法について解説しました。改めておさらいということで、カラーマネジメントシステムを行う際に必要なものと手順を確認しておきます。
①まずは正しい色再現ができるモニターを買う
一般的な画像のカラープロファイルはsRGBとAdobe RGBと解説しましたが、まず最初に行うなら最低限sRGBの色空間を100%再現できるモニターかパソコンを買うことです。具体的に言えば、Dell ディスプレイ モニター P2416DかMacBook PRO Retina displayですね(MacBookは最新のものでなくても、少し型落ちのものでも大丈夫です。amazonで見たりするといろいろあるので探してみて下さいね)。
sRGBとAdobe RGBを少し解説すると、表現できる色域が違います。
出典:色域の話・sRGBではCMYKの20.5%の色が見えていない現実(JP2011の色域を全部書き出してみた) – やもめも
この画像をご覧になると、sRGBよりもAdobe RGBの方が広い色空間を表現できるのが分かります。Adobe RGBはその特性上、主に商業印刷で使われるCMYKの表現を約90%表現できる為、商業印刷ではAdobe RGBが使われることが多いです。そう聞くと、Adobe RGB対応のモニターがいいと思われるかと思いますが、Adobe RGB対応のモニターは高いです。コスパが良いと評判のものでも、BenQ カラーマネージメントモニター SW2700PTが最低でも6万程。上を見たら10万を軽く超えて20万前後です。
また、Adobe RGB対応のモニターとなると、パソコンが一体化したものはありません。モニター単体での販売しかないので、モニターも高い上にパソコン本体も買わないといけません。
一方、sRGB対応で考えるなら約10万ちょっと(新品なら約14万円、中古なら10万円ちょっと)ノートパソコンのMacBook PRO Retina displayという選択肢があり、モニター単体なら約3万円程度あれば評判の良いDell ディスプレイ モニター P2416Dが買えます。すでにそこそこの性能のパソコンがあるという場合はモニターを新調するだけでいいかもしれません。
もし古いパソコンしかないということであれば、ノートパソコンの方が場所を問わないということで扱いやすいです。厳密に言えばパソコンで写真の編集をする部屋の環境も整えるのが理想ですが、まずは写真を仕上げるRAE現像の作業に慣れる・経験を積んでスキルを向上させることを考えると、ノートパソコンで手軽に取り組むのが先決です。
また、将来的にAdobe RGBのモニターを導入したとしても、最初に買ったMacBook PROに接続して使用することも可能です。そういう意味でも、古いパソコンしか持っていない方はまず最初のステップとして、sRGB対応のノートパソコンで慣れていくのがいいと思います。
②モニターキャリブレーションツールを買う
買ったモニターは必ずモニターキャリブレーションツールを買って自分のパソコンのモニタープロファイルを作成する必要があります。メーカー支給のモニタープロファイルでは個体差や経年劣化を調整できず、また色合いも記憶色傾向で見栄えを良くする為にコントラストを強くしていることがある為、正しい色表現になっていません。
ですが、ポテンシャルの高いパソコン・モニターを買えば、モニターキャリブレーションツールでモニタープロファイルを作成することで、ほぼ正しい色を確認することができます。
実際にオススメするものは、i1 display proです。一般的には、約200〜300時間毎に測定し直すことが推奨されています。少し余裕をもって、ざっくり1ヶ月に1回ぐらいですね。
※モニターキャリブレーションには、ソフトウェアキャリブレーションとハードウェアキャリブレーションがあります。ハードウェアキャリブレーションに対応していないモニターをi1 display pro等でキャリブレーションする場合はソフトウェアキャリブレーションになり、この方法だと厳密に言えば階調表現がハードウェアキャリブレーションに比べて若干劣るという傾向がありますが、元々ポテンシャルの高いモニターであればそのデメリットも最小限に抑えられ仕事でも使える実用性になります。
③プリンターを使うならプリンタープロファイルの指定を忘れないようにする
自分でプリンターを買ったら、CD-Rが付属していていろいろダウンロードする必要がありますが、その中にプリンタープロファイルが一緒にダウンロードされます。プリンタープロファイルは、用紙やインクによって変わるので、プリント時にそれぞれの組み合わせにあったプロファイルを指定する必要があるので注意して下さい。この時、プリンター側の色補正はオフにしておき、Photoshopによる色管理でプリントして下さい。
最後に
さて、ここまでカラーマネジメントの概念をなるべく分かりやすいよう解説したつもりですが、如何でしょうか。僕が他のサイトで調べた時は、もちろんICCプロファイルの説明等がでてきますが、それぞれのサイトでニュアンスが微妙に違ったりして、とくに初心者の方にとっては全体的な概念を理解するのが難しいと感じていました。
今回は、そんないろいろなサイトで解説されているニュアンスを聞いた上で、一番分かりやすい【色見本】という表現に置き換えて説明してみました。他のサイトでは違う表現をしているところもありますが、個人的には
画像の色を一旦色見本に変換して、その色見本をモニターやプリンターで正しく表現できるようにしておくことで、色表現を統一することができる。
という表現が一番分かりやすいと思います。
ちなみに、色見本というのはLabカラーになります。Labカラーはモニターやプリンター等の機器の影響を受けない、人の目に映る本当の色になります。この機器に依存しない色見本があるおかげで、いろんなモニターやプリンター間で色の統一を図ることができるようになります。
さて、カラーマネジメントが理解できたら、ここからがスタートとなります。写真表現においてRAW現像は必須になりますが、そのRAW現像を支えるのがモニターでありモニターキャリブレーションツールであり、カラーマネジメントです。今すぐにモニター等を買えないかもしれませんが、カメラやレンズにお金をかけることと同じぐらい、モニターに投資することも大事であることは覚えておいて下さい。