マイクロフォーサーズの手引き

E-M1ユーザーのカメラマンがマイクロフォーサーズを中心に書いていきます

これだけは知っておきたいマイクロフォーサーズのメリットとデメリット《2017.11.5_更新》




E-M1を2年以上使ってきて、最近とくにマイクロフォーサーズのメリットデメリットがよりはっきり分かるようになってきたのでまとめてみたいと思います。

 

 

フルサイズの高感度性能の優位性を相殺する被写界深度の深さに加え、フルサイズよりも効きの良い手振れ補正により高画質を実現

フルサイズとマイクロフォーサーズでは、被写界深度が2段分違います。つまり、フルサイズでF8の被写界深度はマイクロフォーサーズのF4と同等になります。マイクロフォーサーズで風景等を撮影する場合、F4やF5.6で済むのでその分フルサイズよりもISO感度を落とすことができますが、ではフルサイズのISO800とマイクロフォーサーズのISO200はどちらが良好になるのか?という検証を実験:α7ⅡでISO800以上で撮るならISO感度を2段落とせるE-M1のISO200の方が低ノイズ?という記事で行いました。

 

結果は、E-M1とα7RⅡならほぼ同等。E-M1 MarkⅡとα7RⅢならE-M1 MarkⅡの方が少し良好になるぐらいでした。もちろん、三脚撮影でずっと低感度で撮れる場合や動いている被写体を止めるような撮影をする場合はフルサイズの方が高画質で撮影できるかもしれませんが、そのような撮影をしない僕にとってはフルサイズを使うメリットはあまりありません。それに、低感度同士で比較した場合、鑑賞距離からその差を感じるのは難しいでしょう。

 

また、マイクロフォーサーズにはF0.95やF1.2という単焦点レンズがあるので、フルサイズでF2〜2.4相当のボケ量を得ることができます。フルサイズでF1.4の絞り値で撮影したい場合はフルサイズしか選択肢がありませんが、フルサイズのF2〜2.4相当でもいいという場合はマイクロフォーサーズでも撮影が可能です。そして、単焦点レンズでもフルサイズと比較して2段分絞りを開けて撮影できるので、ISO感度も2段落とせることになります。背景をボカす時も、フルサイズの高感度性能の優位性を相殺することができます。

 

手振れ補正に関しては、イメージセンサーが大きい方が効きが少し弱くなる傾向があります。その点、マイクロフォーサーズの方がイメージセンサーが小さいので手振れ補正能力を向上させやすいです。その為、被写界深度の差によりフルサイズの高感度性能の優位性を相殺できれば、手振れ補正効果でさらに高画質で撮影することもできます。

 

フルサイズは高画質と言われることが多いですが、実際の撮影現場ではカメラ単体での性能は相殺されるケースも多いです。  

 

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レンズの小型軽量化 〜 とくに望遠域の小型軽量化はマイクロフォーサーズのメリット

マイクロフォーサーズは全体的に一眼レフのレンズに比べると小型軽量になります。背景のボケ量はマイクロフォーサーズとフルサイズで2段あるので、マイクロフォーサーズのF2.8とフルサイズのF5.6のレンズを比べると同等になるケースもありますが、一眼レフのレンズに比べたらそれでも小型軽量になることがあります。背景のボケ量の差を気にせず、開放絞り値のF2.8通しのズーム等で比較するなら、間違いなく小型軽量になりますね。

 

そして、突筆すべきなのが望遠域での小型軽量化です。オリンパスには40-150mm F2.8というレンズがありますが、これは35mm判換算80-300mmのレンズで、背景のボケ量はF5.6です。各社から70-300mm F5.6系のレンズは出ていて、これらのレンズと比べると重量もサイズもあまり変わらないのですが(300mm F2.8と比べるとかなり軽量)、100-400mm系のレンズと比較するとその差はいきなり顕著に現れます。

 

オリンパスの40-150mm F2.8には専用のテレコンが用意されていて、このテレコンを使うことで35mm判換算112-420mm F4(背景のボケ量はフルサイズでF8)として使うことができます。この時のサイズと重量をフルサイズのレンズと比較すると...

 

  • 40-150mmにテレコン → 重さ865g 最大径79.4mm  最長174.7mm
  • キヤノン 100-400mm → 重さ1570g 最大径94mm  最長193mm
  • ニコン 80-400mm → 重さ1480g 最大径95.5mm  最長203mm

 

オリンパスの重さが群を抜いて軽くなるのが分かります。最長も約2cm短く、最大径も小さくなりますね。またオリンパスからは300mm F4(35mm判換算600mm)というレンズと、パナソニックからは100-400mm(35mm判換算200-800mm)というレンズが出ていますが、

 

  • パナソニック 100-400mm → 重さ985g 最大径83mm  最長171.5mm
  • オリンパス 300mm F4 → 重さ1270g 最大径92.5mm  最長227mm

 

フルサイズで手軽な800mmを開発しても、パナソニックの100-400mm程のサイズと重量にはならないと思うので、マイクロフォーサーズで望遠レンズを使うメリットはかなり大きいでしょう。

 

また、同じ焦点距離と小型軽量をAPS-Cやフルサイズで実現しようとすると、マイクロフォーサーズよりも絞り値が暗くなります。つまり、マイクロフォーサーズはフルサイズやAPS-Cに比べて感度を一段落とせるので、画質がAPS-C並になったE-M1 MarkⅡを使えばフルサイズと同等、APS-C以上の画質になることもありますね。どちらにせよ、最低でも小型軽量か高画質化のどちらかのメリットは得られるようになります。

 

ちなみに、高倍率ズームレンズはマイクロフォーサーズの隠れた魅力です。オリンパス 14-150mm Ⅱは高画質、とは決して言えませんが、そのサイズはとても小型で、重さも260~280g程。小型なミラーレス一眼と組み合わせれば、カメラとレンズを合わせてとても身軽に撮影に出かけることができます。

これは、とくにオリンパスのレンズになってきますが、オリンパスのレンズは全体的に最大撮影倍率が高いです。代表的なレンズを見てみると、

 

  • 7-14mm PRO = 0.24倍
  • 12-40mm PRO = 0.6倍
  • 40-150mm PRO = 0.42倍
  • 14-150mm = 0.44倍(テレコン装着時0.6倍
  • 12-100mm = Wide 0.6倍   Tele 0.42倍
  • 300mm = 0.48倍

※倍率は35mm判換算での数値です。

 

という風に全体的に高いです。この撮影倍率の高さのおかげで、レンズ交換なしで簡易マクロ撮影が可能となります。7-14mm の超広角レンズに関しては他のレンズでもありがちな倍率ですが、その他のレンズは全てが基本的に高い倍率になっています。どのレンズを使っても、簡易マクロ的な撮影ができるのはありがたいですね。

 

この最大撮影倍率の高さのおかげで、スナップも撮りやすいですし仕事もやりやすいです。その為、僕はマクロレンズを持っていません。

 

最大撮影倍率の高さと、望遠の小型軽量化が相まって昆虫撮影等をされる方にはとくにオリンパスのレンズは人気がありますね。小型軽量で撮影倍率の高さを必要とされる方には魅力的なシステムになるかと思います。

 

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被写体を選ばない万能性

マイクロフォーサーズシステムは、現在では様々なカメラが用意されています。小型軽量重視のカメラから、プロカメラマンの使用を想定した高性能カメラO-MDシリーズまで多様です。そして、使い勝手の良いオリンパスのOM-Dシリーズやパナソニックのフラッグシップの充実により、現在では取材撮影を行うカメラマン、移動時間が長い写真家、昆虫等の小さな被写体を撮影する写真家、望遠を多様するスポーツ写真家や写真愛好家がマイクロフォーサーズを愛用しています。

 

様々なユーザーからの支持を支えている豊富なレンズ群も、マイクロフォーサーズの魅力です。オリンパスからもパナソニックからもF2.8通しのレンズが登場し、F1.2の単焦点レンズや高性能ズームも充実しています。マニュアルフォーカスのレンズも含めれば、フルサイズでF2のボケ量を得られるレンズもあるので、マイクロフォーサーズでも大きく背景をボカすことができます。とくに、ミラーレス一眼はピントが合ったところを色で教えてくれるピーキング機能があるので、マニュアルでのピント合わせも一眼レフに比べてかなり楽になり精度が上がります。

 

ピーキング機能に関してはこちらで詳しく書いているので併せてご覧下さい。

 

 

 

また、オリンパスのE-M1 MarkⅡは、像面位相差AFも全てクロスセンサーになりアルゴリズムも一新されたので、動体撮影がかなり実用的となりました。パナソニックも独自の空間認識AFを磨き、GHシリーズのカメラはコントラストAFだけで速いAFスピードと動体撮影の追従性を実現しています。最新のGH5では空間認識AFにさらに磨きがかかっているので、100-400mmを最大限活かせるカメラになっています。《ミラーレス一眼は動体撮影ができない》というのは一昔前の話で、今では大きく重い一眼レフの望遠レンズではなく、マイクロフォーサーズで望遠レンズを揃える人が増えています。

 

他にもまだあります。ミラーレス一眼は、一眼レフ特有の前ピン後ピンに悩まされることがありません。その上、マイクロフォーサーズのコントラストAFはどんどん精度が良くなっていて、大きく背景をボカした際でも精度はかなり高いです。

 

また、E-M1 MarkⅡはカメラメーカー内で1番の手ぶれ補正を搭載しており、純正のレンズ内手ぶれ補正と組み合わせることで1秒や2秒というシャッター速度でも手ブレせずに撮ることができますが、こんなカメラは他にありません。

 

イメージセンサーが小さい分少し高感度撮影で不利になると言われていますが、E-M1 MarkⅡからはAPS-Cと同等かそれ以上と言われるぐらい良くなりましたので、かなり実用的です。もちろん、次のAPS-Cはさらに良くなっている可能性もありますが、マイクロフォーサーズのイメージセンサーも日々良くなっていくはずです。また、シャッター速度を遅くできる撮影が多い場合は、手ぶれ補正が強力なE-M1 MArkⅡでも低感度で撮影することができ、イメージセンサーの小ささのデメリットを相殺できることが多いです。

 

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そんなマイクロフォーサーズにもデメリットが...

300mm以下ならソニーのEマウントと小型軽量化に差がない

以上のように、とても魅力的なシステムになってきたマイクロフォーサーズですが、現時点ではデメリットと言いますか、個人的に感じる小さいながら気になる点もいくつかあります。1つ目は、300mm以下のレンズで揃えるなら、ソニーのフルサイズミラーレス一眼であるα7シリーズと機材の大きさや重さに差が無くなることです。

 

実際に、似たようなスペックのレンズを比較してみます。

 

  • SONY:α7Ⅱ = 599g(幅126.9 x 高さ95.7 x 奥行き59.7mm
  • OLYMPUS:E-M1 MarkⅡ = 574g(幅134.1 x高さ90.9 x 奥行き68.9mm

 

  • SONY:16-35mm = 518g(最大径 78 x 長さ98.5 mm
  • OLYMPUS:7-14mm = 534g(最大径 78.9 x 長さ105.8 mm

 

  • SONY:55mm F1.8 = 281g(最大径 64.4 x 長さ70.5 mm
  • OLYMPUS:25mm F1.2 = 410g(最大径 70 x 長さ87 mm

 

  • SONY:Batis 85mm F1.8 = 475g(最大径 78 x 長さ92 mm
  • Panasonic:LEICA DG 42.5mm F1.2 = 425g(最大径 74 x 長さ76.8 mm

 

  • SONY:24-70mm ZA = 426g(最大径 73 x 長さ94.5 mm
  • OLYMPUS:12-40mm PRO = 382g(最大径 69.9 x 長さ84 mm

  

  • SONY:70-300mm = 854g(最大径 84 x 長さ143.5 mm
  • OLYMPUS:12-40mm PRO = 760g(最大径 79.4 x 長さ160 mm

 

  • SONY:24-240mm = 780g(最大径 80.5 x 長さ118.5 mm
  • OLYMPUS:12-100mm PRO = 561g(最大径 77.5 x 長さ116.5 mm
  • OLYMPUS:14-150mm = 285g(最大径 63.5 x 長さ83 mm

 

このように多くのケースで大きさと重さに差がありません。先ほども触れたように400mm以上の望遠になるとマイクロフォーサーズの小型軽量化が顕著になると思いますが、300mm以下のレンズで揃えることを考えると、マイクロフォーサーズのシステムが絶対に小型!とは言えません。《SONYのEマウント(APS-C)がマイクロフォーサーズより小型軽量な件について》という記事でも紹介していますが、ソニーのAPS-Cのミラーレスと比較すればソニーの方が小型軽量になるぐらいです。

 

ただ、高倍率ズームをより小型なタイプで比較するとかなり小型軽量になります。14-150mmを選択すると画質は少し落ちてしまいますがより機材を軽量化することができますね。自分が何を求めているのかをよく考えて、マイクロフォーサーズなのかソニーのミラーレス一眼なのかを選択したいところです。

 

実用的ではあるが低感度のシャドウノイズが多いのでレタッチ耐性はAPS-Cに劣る

2つ目は低感度のシャドウノイズです。《マイクロフォーサーズは高感度が苦手》は間違い。本当の弱点は低感度のシャドウノイズ という記事でも解説していますが、マイクロフォーサーズはAPS-Cやフルサイズに比べてシャドウノイズが多いです。ISO200スタートの富士フイルムのミラーレス一眼も同様ですが、ISO200スタートのカメラはダイナミックレンジを広げる代わりに低感度でのシャドウノイズが増えます。

 

ただ、通常の撮影では実用的で問題なく、画面の暗いところを2EVプラス補正した場合でも《マイクロフォーサーズのノイズ耐性を約1段アップさせるフォトショップの新機能という記事で紹介しているように丁寧に仕上げてやればシャドウノイズもかなり減らすことができるので、実用としては問題ありません。

 

しかし、少し手間がかかるという意味ではデメリットです。APS-Cやフルサイズなら最初から暗い部分をプラス補正してもノイズは少ないので、最初からクリーンな写真が良い・手間をなるべく省きたいと思うのであれば潔くAPS-Cやフルサイズにする方がいいでしょう。

 

最後に

ここまで、マイクロフォーサーズのメリットとデメリットを解説してきましたが、如何でしょうか。ちなみに、ここまで触れていないポイントとして、ソニーのα7シリーズのメリットとしては

 

・35mm判換算10mmの撮影ができること

 

マイクロフォーサーズで最も広角なのは35mm判換算で14mmです。個人的には、35mm判換算14mmでも十分な写真が撮れますが、10mmのレンズが選択できるというのは非常に魅力的です。個人的にはカメラとしての完成度が高いE-M1系を使っていきたいと思うので是非とも12mm以下のレンズを開発してほしいですね。