マイクロフォーサーズの手引き

E-M1ユーザーのカメラマンがマイクロフォーサーズを中心に書いていきます

マイクロフォーサーズで絞りの調整が可能なアオリレンズ




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マイクロフォーサーズ規格を採用しているオリンパスとパナソニックは、レンズラインナップも豊富で大方のレンズが揃っています。F2.8通しで防塵防滴の超広角ズーム、標準ズーム、望遠ズーム。廉価版のレンズ。小型軽量の単焦点レンズ。そして、オリンパスからはF1.2の単焦点レンズ広角、標準、中望遠で揃っています。

 

パナソニックからは100-400mm(35mm判換算200-800mm)のレンズが販売されています。このレンズはで描写性能も良しAF速度も良しです。E-M1 MarkⅡやGH5で使えば動体でも使えます。35mm判換算800mmのレンズが約1kgというコンパクトなサイズに収まっているのは、マイクロフォーサーズのメリットです。

 

さて、前置きが長くなりましたが、マイクロフォーサーズは現状でも種類が多くて選択肢は多いです。しかし、そんな中でもまだ1本も存在しないレンズがあります。

 

ピント面の角度を変えられるレンズ

豊富なラインナップの中でも、1つも存在していないのがアオリレンズです。アオリレンズの特徴はピントの面の角度が変えらることです。通常はカメラに対して垂直のピント面になりますが、その面の角度を調整することで、被写界深度(ピントの合う範囲)を変えることができます。
 
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ピント面の角度を変えられるメリットとしては、被写界深度を変えられることです。例えば、テーブルの上に並べた被写体を普通に撮ろうとすると、絞り値を大きくしても奥まで鮮明に写すことが難しい場合があります。 
 
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しかし、ピント面をテーブルと並行になるように調整することで、絞り値をそのまま、又は少し絞り値を小さくしてもテーブルの上に置いた被写体全体にピントが合うようになります。 
 
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逆に、ピント面の角度調整をテーブルに対して垂直になるようにしてやれば、被写界深度を浅く、つまりより背景がボケるようにもなります(さらにその方向に目一杯角度をつければ、風景でもミニチュアのような写真が撮れます)。絞り値を変えなくても、被写界深度を調整することができるので非常に便利です。
 
また、レンズを回転させることで、ピント面の角度を横にしたり斜めにすることも可能なので、いろんな方向でピント合わせが行えるようになりますね。
 
このように、ピント面の角度を変えられるアオリレンズですが、アオリレンズは現在ニコンとキヤノンしか販売されていません。しかし、あるものを使うことで他社製のアオリレンズをマイクロフォーサーズで使うことができます。
 

マウントアダプターで他社製のレンズを使う 

通常、レンズは使っているカメラのメーカーのものしか使えません。

 

※オリンパスとパナソニックは同じ規格のマウントを採用している為、パナソニックのレンズをオリンパスのカメラで使うことが可能です。もちろん逆も可能です。

※シグマやタムロンというサードパーティ製のレンズを使えるケースもあります。

 
しかし、マウントアダプターというものをカメラとレンズの間に取り付けることで、他社製のレンズも装着することができるようになります。マウントアダプターは基本的に絞りの調整やAFができないことが多く、昔のオールドレンズを使うことが主な用途でしたが、近年はカメラ側で絞りの調整やAFができるようなアダプターが販売されるようになりました。その為、オリンパスのカメラでもキヤノンのレンズが使えるようになったのです。
 
僕が実際に使っているのはこちらのマウントアダプターです。
 
アマゾンで38,800円で買うことができ、このアダプターを使うことでキヤノンのレンズを普通に使うことができるようになります。AFの動作は各レンズ毎に相性があるものの実用的なものも多数あり、絞りの調整はどのレンズでも問題なく行えるようです。発売から何度かファームエアが更新され、各動作の不安定さも改善されています。
 
このアダプターに、僕はキヤノンのTS-E45mm F2.8をつけて撮影しています。
 

 

アオリレンズなので値段は少し高いレンズですが、それだけ価値のあるレンズです。実際にオリンパスのE-M1にキヤノンのTS-E45mmを取り付けて撮影したサンプルを見てみましょう。

 

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僕が普段使っている機材をTS-E45mm F2.8で撮影してみました。絞りはF11です。ピント面を板とほぼ平行にしているので奥までしっかりピントがきています。では、ピント面を通常通りにして撮影したらどうなるか?

 

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小さい画像だと一見全体的にピントが合っているように見えますが...

 

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このように、拡大してみるとF11でも後ろの方がボケているのが分かります。小さな画像では分かりませんが、実際にA4ぐらいに印刷するとボケているのが分かってしまうので、全体的にピントを合わせた写真が必要ならアオリレンズでピント面の角度を調整して撮るしかありません。

 

ちなみに、ピントをズラした写真を何枚か撮影して後から合成することも可能ですが、この写真のように高さが違うものが並んでいるような被写体は合成時に不自然なボケが残ってしまうことがあります。時間をかけて手動で調整すれば綺麗に仕上がることもありますが、それではかなり手間がかかります。合成は被写体によっては綺麗にいかない場合もあり完璧ではないので、基本的にはアオリレンズを使いたいところです。

 

35mm判のレンズを使って解像度は足りるのか?

僕がマイクロフォーサーズでフルサイズ用のレンズを使う際に一番気になったことは、フルサイズ用のレンズをマイクロフォーサーズで使うと理論上解像度が若干落ちる可能性があるということです。一般的にはマイクロフォーサーズは撮像素子がフルサイズより小さい分、フルサイズの2倍の解像度が必要と言われています。

 

とくに、TS-E 45mmは設計が古い為マイクロフォーサーズで撮ったらどうなるだろう?と気になっていましたが、実際に使ってみると問題ないと感じています。レンズの特性上F2.8では少し柔らかい描写ですが、F4からはかなりシャキっと写り実用的な解像度になります。マイクロフォーサーズで最高のレンズの1つと言われている、パナソニックの42.5mm F1.2と比べるとさすがに解像度で少し見劣りしますが、オリンパスの40-150mm F2.8 PROと焦点距離を合わせればむしろ良いぐらいです(40-150mmは中間が一番良い描写をするので、中間で比べたら少し劣る可能性がありますが、それでも十分な解像度はあります)。

 

以下の比較は、等倍で切り取ったものです。

 

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※42.5mmとの比較は、回折現象の影響を受けないF5.6での比較です。ちなみに、マイクロフォーサーズの1600万画素では、F8ではよーく見比べれば若干解像度が落ちているかな?というぐらいの差です。

 

僕の用途では主に仕事での商品撮りで使いますが、商品や料理の撮影で一番使う35mm判換算90mmでアオリレンズが使えるのはありがたいです。

 

オリンパスがアオリレンズの特許を出願

今現在はマイクロフォーサーズ用のアオリレンズはありませんが、オリンパスはアオリレンズ関連の特許をいくつか出していますので、もしかしたら将来販売されるかもしれません。

 

それまでは、マウントアダプターを使ってキヤノンのアオリレンズを使うしか選択肢がありませんが、元々フルサイズ用のレンズなのでマイクロフォーサーズで使えば画面の隅々まで高画質で撮れます。もしオリンパスのアオリレンズが発売になったら、どれだけキヤノンのアオリレンズに迫る性能か、気になりますね。

 

アオリレンズはピント面の角度を変えるだけではない

さて、ここまでピント面を変えられるアオリレンズをご紹介しましたが、アオリレンズはピント面を変えるられるだけでなく、建物の歪みを無くして撮ることもできます。

 

今回ご紹介したピント面の角度を変えることをティルト、建物の歪みを無くして撮ることをシフトと言いますが、シフトに関しては下記の記事で詳しく解説されていますので参考にご覧になってみてください。

 

 

最後に

アオリレンズが必要になる人は少ないです。しかし、仕事でいろいろ撮影する人や特殊な撮影がしたい人にとっては欠かせないレンズになります。ちなみに、アオリレンズはフルサイズで使うかマイクロフォーサーズで使う方がいいと思います。その理由は、APS-Cで使うと焦点距離が中途半端になるからです。マイクロフォーサーズなら、24mmが48mmの標準レンズに。45mmが90mmの中望遠レンズになります。ほぼフルサイズと同じ感覚で使えるのでありがたいですね。