先日、こんな記事を見つけました。
森山大道氏は、写真をしているほとんどの方が一度は耳にしたことがあると言っても過言ではないぐらい、写真界では有名な方です。なのでこの記事を見てみたのですが、このまとめを作成した方はアマチュアの方だからか、本質とずれた内容になっている部分があると感じました。
僕が気になった部分はこちら。
ただ僕がこれまで撮影してきた路上のスナップ写真というものは、とにかく圧倒的に量を撮らないと意味がないんですよ僕のスナップ写真に対する考え方の一つとして、「量のない質はない」というのがあります
この一文は、スナップ写真に対しての森山氏の考え方ですが、基本的にはどの撮影にも言えることでありこの内容を僕は否定しません。僕も同じように思っているからです。しかし、この一文を鵜呑みにしない方がいい人達がいます。それは初心者です。この一文を読んで、
・やっぱり量を撮らないといけないんだ
・量を撮れば質も高められるんだ
と思う方も多いかもしれませんが、残念ながら初心者は量を撮るだけでは質は高まりません。森山氏の「量のない質はない」という言葉は、中級者以上の人が言葉の通り理解すればその人のレベルは上がっていきます。しかし、初心者はとても非効率な時間にしかならないのです。
質の上げ方を知らなければ経験値は得られない
まずはこちらの画像をご覧ください。
これは、初心者から上級者までを5つのステージに分けた例です。細かく言えば3.2や3.7等、1つのステージの中でも10段階ぐらいに分けられますが、とりあえず5つのステップでお考えください。
画像のように、初心者から中級者までは質を重視する必要があり、中級者から上級者にかけてはいかに量をこなせるかが重要になりますが、その理由として写真上達に不可欠な基礎スキルを説明しなければいけません。
ここで言う基礎スキルは、どう撮ればどう写るかが分かるスキルです。僕の講座や教室でもこのスキルを徹底して磨く習慣を身につける方法をお伝えしていますが、この基礎スキルが身についていなければいくら量をこなしても質を得ることはできません。
なぜなら、どの要素がどのように係わり合えばどう表現されるか?ということを頭でも感覚的にも理解していることが、量を撮ることで質が高まり経験値になる条件だからです。
初心者の人は、写真表現はどのような要素があるのかをまず理解し、それぞれの要素がどう変化すれば写真がどう変わるのかを理解しなければいけません。人間は意識を向けたものからしか情報が得られません。基礎スキルを意識せずに1000枚撮るより、基礎スキルを意識して100枚撮る方が質はずっと高くなります。中級者までは、量をこなせば自然と経験値が高まる最低限の基礎スキルを身につける為の期間なのです。
森山氏の場合
森山氏がリコーのGRというコンパクトカメラを使っているのは有名ですが、当然森山氏はGRというカメラがどんな写り方をするのかは理解されています。GRはレンズの写る角度が固定されている単焦点レンズのカメラなので。
そして、光や背景など写真表現の要素がどう変化すれば写真がどう変わるのかも理解されています。その上で、圧倒的な量を撮ることで基礎スキルを向上させ、さらに自身の心情を都会の被写体で表現しています。森山氏の写真を見て何かを感じるのは、その街のリアルさを森山氏のフィルターを通して体験できるからだと僕は考えています。
森山氏にとって「量のない質はない」という考え方が重要な理由は、森山氏が上級者であるからです。そして、この言葉はプロとしての質の話であることに気づかなければいけません。
上級者の言葉は初心者ほど鵜呑みにしてはいけません。上級者の言葉は、シンプルが故にとても多くの情報が詰まっています。言葉の背景にも目を向けない限り、その言葉の本当の意味を理解することはできないのです。